研究課題/領域番号 |
25460040
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
轟木 堅一郎 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (70341451)
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研究分担者 |
林 秀樹 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (00419665)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抗体医薬 / LC/MS/MS |
研究概要 |
従来法の問題点を克服した簡便かつ迅速なトリプシン消化 LC/MS/MS による抗体医薬品の新規血漿中薬物濃度分析法を開発した。分析対象とした抗体医薬として、関節リウマチ治療薬であるtocilizumab、抗悪性腫瘍薬であるbevacizumabおよびcetuximabを用いた。本法ではトリプシン固定化モノリススピンカラム(MonoSpin Trypsin)を用いることで、トリプシン消化処理の簡便化と時間短縮を図った。また、MAYI-ODSカラムを分析カラムの前に配置することで、固相抽出操作のステップを省き、タンパク質や塩などの夾雑成分によるペプチド定量妨害の低減を図った。ヒト血漿中に含まれず、かつ各抗体医薬品に特異的なトリプシン消化ペプチドを探索した結果、それぞれ16(bevacizumab)、15(cetuximab)、8(tocilizumab)アミノ酸からなるトリプシン消化断片を見出すことができた。これらの標品ペプチドを化学合成し、MRM検出のための条件最適化を行った。トリプシン固定化モノリススピンカラムを用いることで、従来、長時間(14時間以上)を要していたトリプシン消化過程を2時間程度に短縮することができた。また、前処理カラムにMAYIカラムを利用することで、血漿添加試料におけるトリプシン消化物の脱塩・精製操作が不要となった。これらの結果を元に、各抗体医薬品を100 μg/mL添加した血漿試料をLC/MS/MS分析したところ、3医薬品ともに血漿中から良好に分離、定量することができた。各抗体医薬品についてバリデーション試験も実施した。また、tocilizumabについては、関節リウマチ患者中の血漿中薬物濃度分析に適用し、各種疾患マーカーと比較することで同薬物の治療効果判定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度としては、おおむね順調に進行していると考えている。 その理由として、本課題では3つの主要なテーマ(1 MAYI カラムをトラップカラムとして前処理を自動化したLC-MS/MS 法の開発、2 フルオラス誘導体化-LC-MS によるフォーカシングプロテオミクス法の開発、3 Fluorous Fluorescence Double Derivatization(FFDD)法によるLC-蛍光分析法の開発)を設定したが、課題1については、従来法の問題点を克服した簡便かつ迅速な抗体医薬品の新規血漿中薬物濃度分析法として、臨床分析への適用も含め課題を終えることができた。本法では従来、長時間を要していたトリプシン消化過程を大幅に短縮することができ、前処理カラムにMAYIカラムを利用することで、血漿添加試料におけるトリプシン消化物の脱塩・精製操作が不要となった。また、tocilizumabについては、関節リウマチ患者中の血漿中薬物濃度分析に適用し、各種疾患マーカーと比較することで同薬物の治療効果判定を行った。本研究成果については、現在論文投稿中である。 現在、2つめの主要なテーマある「選択的な分離を可能とするフルオラス誘導体化-LC/MS によるフォーカシングプロテオミクス法の開発」に着手している。本分析法では、抗体医薬品をトリプシン消化後、パーフルオロアルキル鎖を持つヨードアセトアミド誘導体によりCys 含有ペプチドをフルオラスタグ化する。タグ化したCys 含有ペプチドをフルオラスLC カラムで選択的に分離精製後、UPLC-ESI-TOFMS により分析するというものである。本法ではパーフルオロアルキル鎖の溶解性が一番の問題となるが、従来にない新しいタイプのフルオラスタグ化試薬をいくつか考案し、合成・評価中である。次年度も問題なく研究を遂行できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、「選択的な分離を可能とするフルオラス誘導体化-LC/MS によるフォーカシングプロテオミクス法の開発」を継続して実施する。本法では、前述のようにチオール選択的な新規フルオラスタグ化試薬を利用する。合成・評価中の候補化合物の中から最適な試薬を見出し、同試薬による抗体医薬分析を実施する。抗体医薬のトリプシン消化断片のうち、システイン含有ペプチドをフルオラスタグ化し、フルオラスLC カラムで分離後、UPLC-ESI-TOF MS により分析する。最初、移動相に疎フッ素性溶媒(水を多く含むアセトニトリルor メタノール)を用いることで、夾雑物タンパク質や塩類、システイン非含有ペプチド断片などを先に溶出させる。この溶出液はMS イオン源に導入しない。次に移動相を親フッ素性溶媒(80%以上のメタノール水溶液、70%以上のアセトニトリル水溶液)へと変更することで、フルオラスタグ化されたシステイン含有ペプチドを溶出させTOF MS 検出する。フルオラスタグ化により、対象ペプチドの分子量が大きくなる(>1,000)ので、TOF MS 検出では、多価イオンとして検出する。対象ペプチドの分離条件およびTOF MS検出条件の最適化、分析法バリデーションを実施する。最終的には、tocilizumab、bevacizumabについて、関節リウマチ患者およびガン患者の臨床検体分析へと適用し、開発した方法の有用性を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入品目の価格および、消費税との兼ね合いで、所要額と同一金額とはならなかったため。 次年度に繰越して使用する。
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