研究課題
近年,抗体医薬の使用が進むにつれ,臨床現場における有効治療域濃度の維持や投与計画の設定,適正使用などのための血中薬物濃度分析の必要性が高まっている。現在,抗体医薬の血中薬物濃度分析には,主にELISA法が用いられている。ELISAは高感度かつハイスループットな分析を可能とするが,交叉反応の可能性や分析精度に問題がある場合も多い。そのため,ELISAの測定結果を補完する特異性かつ信頼性の高い分析法の開発が望まれている。そこで昨年度我々は,アフィニティー精製と高温逆相LC(HT-RPLC)-蛍光検出を組み合わせた抗体医薬の新規血漿薬物濃度分析法を開発した。本年度は、本分析法をBevacizumabおよびInfliximabが投与されたガン患者,関節リウマチ患者の実試料分析へと適用することができた。本分析法は臨床分析に十分な感度を有していたが,微量血液試料での分析や,低用量投与が予想される次世代型抗体医薬の分析に適用するには,更なる高感度検出化が要求される。そこで次に,上記分析法における検出感度の向上に関する検討を行った。具体的には,(1) o-phthalaldehyde(OPA)と2-mercaptoethanolによるポストカラム蛍光誘導体化,(2) ヒトIgGのFc部位と特異的に結合するZenon Human IgG labeling kitによる蛍光標識法について検討した。その結果,(1)ではポストカラム誘導体化条件の最適化により,HT-RPLC分析において自然蛍光よりも2倍以上の高感度化を達成した。(2)では,SEC分析において抗体医薬との蛍光性複合体の生成が確認され,自然蛍光検出よりも10倍以上の高感度化を達成した。以上,本研究により簡便かつ高感度,高精度な血中抗体医薬分析法を確立することができた。本法はELISA法やトリプシン消化-LC-MS/MS法に代替しうるポテンシャルを秘めており,製薬現場,臨床現場等での利用が期待できる。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 3件、 査読あり 13件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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