研究課題
本研究課題では、small interfering RNA(siRNA)のがん医療への応用展開に寄与することを目的とし、画期的な核酸デリバリーシステムを利用したSynthetic lethality(合成致死)誘導による選択的抗腫瘍効果について研究を行う。昨年度までに、培養がん細胞を用いてphosphatase and tensin homolog deleted on chromosome 10(PTEN)とpoly [ADP-ribose] polymerase 1(PARP1)の同時失活により合成致死に至ることを示唆するデータを得た。本年度は、培養がん細胞を用いた合成致死性に関する検討に加えて、インビボへの応用に向けた検討を行った。マウスLewis肺がん細胞株にshort hairpin RNAを導入してPTEN遺伝子をノックダウンした細胞株を樹立した。PTEN欠損Lewis肺がん細胞にPARP1を標的としたsiRNA(siPARP1)を導入し、リアルタイムRT-PCR法及びWestern blotting法によって遺伝子サイレンシングを確認した。WST-8 assayによって抗がん効果を試験したところ、PARP1ノックダウンにより、PTEN欠損Lewis肺がん細胞の増殖が抑制された。一方で、インビボへの応用に向けてsiRNAベクターの開発を実施した。これまでsiRNAベクターの主成分として用いてきたdicetyl phosphate-tetraethylenepentamineの構造類似体を複数種合成し、これまでに開発した脂質ナノ粒子の導入効率をはるかに凌ぐ新規ベクターの開発を試みた。GFPを恒常的に発現するヒト繊維肉腫細胞への導入効率と細胞毒性を指標にして脂質ナノ粒子の処方スクリーニングを実施した。その結果、dioleoylphosphate-diethylenetriamineを主成分として含む脂質ナノ粒子を用いることにより、これまでに開発した脂質ナノ粒子と比較し、十倍以上高い導入効率が得られた。今後、独自に開発したベクターを用いてsiPARP1デリバリーを行い、合成致死性に基づく選択的抗がん効果について検討を進める計画である。
2: おおむね順調に進展している
全体としては申請書に記載した年次計画に沿って研究が進行しているため。
当初の計画に沿って研究を推進する予定である。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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