研究課題
Oil-in-water (o/w)エマルションは、クリーム剤などの外用剤に広く利用される剤形である。エマルションの物理安定性は、分散する油滴が凝集し、クリーミングが進むにつれて低下していく。したがって、エマルション製剤の製剤安定性を正確に評価するためには、クリーミング挙動を正確に理解することが非常に重要である。近年、我々は、MRIの水分子運動性可視化技術を応用し、エマルション製剤の製剤安定性を非破壊的かつ詳細に評価できる手法を考案した。本申請課題では、上記のMRI技術を活用し、製剤安定性に優れたエマルション製剤の設計を行うこととした。なお、本課題の特色として、エマルション製剤の製剤研究に”次世代の製剤品質管理システム” として注目されるQuality by Design(QbD)アプローチを活用しながら、検討を進めていくこととする。初年度は、エマルション製剤の初期物性に対する設計変数の寄与について検討した。2年目は、試料の製剤安定性をMRIを用いて詳細に評価することとした。調製したモデル製剤のクリーミングを促すため、加速試験(60℃, 12日間)を行い、加速試験前後の試料の見かけの拡散係数画像(ADCマップ)を撮像した。実験の結果、設計変数による製剤安定性への寄与を明確にすることができた。最終年度となる次年度は、Kohonenの自己組織化マップや応答曲面法などの各種手法を駆使して、要因-初期物性‐製剤特性間の因果関係を明確にしていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当課題の特色は、”次世代の製剤品質管理システム” として注目されるQuality by Design(QbD)アプローチをエマルション製剤の処方設計に応用し、物理安定性に優れたエマルション製剤を設計する点にある。科学的な根拠に基づいて製造プロセスの最適化を行うことで製剤の品質を保証しようとするQbDの考えでは、内在する設計変数-製剤特性間の潜在構造を定量的に可視化することが非常に重要である。本申請では、実験計画法に従って設計変数(水分量、界面活性剤添加量、HLB値)を変化させた27種類のモデル製剤を試料として調製し、MRIを用いて試料中の水分子運動性や製剤安定性を視覚的に評価している。平成26年度の検討では、主に製剤安定性評価を行った。各試料について加速試験(60℃、12日間)を行ったところ、設計変数の違いによって製剤安定性は大きく変化し、HLB値の低い試料で、製剤が安定化する傾向が認められた。申請者は、初年度(平成25年度)の検討において、設計変数と初期物性[MRパラメータ(T1緩和時間および拡散係数)や粘度など]との関係を明らかにしている。最終年度となる平成27年度では、これまでのデータを統合して、エマルション製剤の設計変数-初期物性-製剤安定性間の因果関係を明らかにする予定である。以上のことから現在時点では、研究は非常に順調に進んでいる。
現在のところ、本申請課題は計画通り順調に進んでいるため、今後も引き続き申請書の研究計画に沿って研究を進めていく。初年度の検討で、エマルション製剤の初期物性に対する設計変数の寄与を、次年度では製剤安定性を評価できたため、最終年度(平成27年度)では、これまでに得られた知見を統合して、設計変数-初期物性-製剤安定性の関係を明確化したうえで、製剤安定性の良好なエマルション製剤が調製される調製条件を探索する。実験方法としては、実験データをもとに、応答曲面法を利用して設計変数-特性間の相関モデルを構築し、未知の処方における初期物性および製剤安定性を予測する。続いて、Kohonenの自己組織化マップ(SOM)などの手法を利用して、設計変数-初期物性-製剤安定性の因果関係を視覚的に理解したうえで、製剤安定性に優れるエマルション製剤の調製できる調製条件の探索(デザインスペースの設定)を行う予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 1件)
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