研究課題/領域番号 |
25460046
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
山本 浩充 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (30275094)
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研究分担者 |
福田 光男 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (40156790)
古野 忠秀 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (80254308)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯周病 / ドラッグデリバリーシステム / ナノ粒子 / 高分子ミセル / バイオフィルム / 嫌気性菌 |
研究概要 |
本年度は、マクロファージ細胞に対して歯周病原因菌の一つである嫌気性菌 Porphyromonas gingivalisを播種したことによるケミカルメディエーター産生評価系の確立を行った。また、歯周病が発症する要因の一つとなっている細菌が形成するバイオフィルムに対するナノ粒子の浸透性と、in vivoでは歯周組織に対するナノ粒子の浸透性を評価した。 マクロファージ細胞をプレートに播種、インキュベートした後、菌液を加えて共培養した。嫌気性菌であるP. gingivalisであっても、12時間程度の培養時間であればマクロファージ細胞と共存し、マクロファージ細胞からのIL-6などのケミカルメディエーター産生を促進した。 粒子径約250nmの表面未修飾ナノ粒子では、バイオフィルムへのナノ粒子の浸透がほとんど起こらず、バイオフィルムの形成が未成熟な部分に浸透していくものの、形成部位では表面への吸着が確認されただけであった。これに対し、キトサンで表面修飾したナノ粒子では、形成されたバイオフィルム内へもナノ粒子が浸透していくこと、さらには一部のバイオフィルムがナノ粒子により溶解されて小孔が明き、その部分を介してナノ粒子がバイオフィルム内部に移行することが電子顕微鏡により観察された。未修飾ナノ粒子ではこのような現象は認められないことから、表面に存在するキトサンによってバイオフィルムが溶解されていることが推察された。また、さらに粒子径の小さな高分子ミセル粒子(約100nm)では、バイオフィルムに浸透するナノ粒子量が増加した。 ラットを用い、歯周組織周辺部へのナノ粒子の浸透性について評価した。その結果、ナノ粒子は組織表面から内部へと浸透していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は歯周組織に対するナノ粒子の浸透性評価を実施し、浸透部位でのナノ粒子の挙動を評価することができた。また、マクロファージ細胞と嫌気性菌の共培養系からなるin vitro評価系を確立することにも成功した。また、歯周病の難治化の原因の一つとなっている細菌によって形成されたバイオフィルムへのナノ粒子の浸透性、ならびにナノ粒子表面をキトサンで修飾することによってバイオフィルムを溶解させる可能性についても見いだすことができた。 しかしながら、歯周組織周辺部での炎症の惹起実験には成功できていない。
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今後の研究の推進方策 |
早急に小動物の歯周組織周辺部における炎症発生モデルを確立し、炎症部位でのナノ粒子の挙動などを明らかにしていく。 さらにin vitroでのナノ粒子を用いた炎症抑制効果を有するドラッグデリバリーシステムと抗菌剤を封入したナノ粒子を用いたドラッグデリバリーシステムを融合し、効率よく歯周病を治療するシステムの構築に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度物品などを購入する際、より低価格の試薬や器具を購入することに努めた結果、1,025円の余剰が生まれた。 生じた次年度使用額については、26年度の研究において試薬購入費に充て、より有効な研究を実施していく予定である。
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