研究課題/領域番号 |
25460047
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
小嶋 仲夫 鈴鹿医療科学大学, 医用工学部, その他 (80333178)
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研究分担者 |
植田 康次 名城大学, 薬学部, 助教 (30351092)
岡本 誉士典 名城大学, 薬学部, 助教 (50512323)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 白金4価錯体 / 活性酸素種 / 酸化ストレス / グルタチオン / 薬物耐性 / タイムラプス解析 / ヒト卵巣がん |
研究実績の概要 |
白金4価[Pt(IV)]錯体は,抗がん性白金2価[Pt(II)]錯体のプロドラッグであり,cisplatinの長期投与による耐性化を克服することが期待されている.本課題では、Pt(IV)錯体の細胞内動態および細胞障害機構を明らかにすることを目的として、ヒト卵巣がん細胞A2780およびそのcisplatin耐性株A2780cisに対してcisplatinのPt(IV)誘導体であるcis-diammine-dichloro-platinum(IV)[cis-Pt(IV)]が引き起こす細胞内イベントを解析した。その結果、cisplatinおよびcis-Pt(IV)は細胞内取り込み・細胞外排出動態に明らかな差異は認められなかった。また、取り込まれたPtの細胞内分布についても違いは認められなかった。したがって、cis-Pt(IV)は細胞内で還元的代謝を受ける過程でcisplatinとは異なる細胞影響を引き起こすことが示唆された。われわれは以前の研究において、cis-Pt(IV)が生体内還元物質により還元される過程で活性酸素種(ROS)産生を介した酸化的DNA損傷を誘発することを明らかにしている。確かに、本課題で細胞株を用いた検討においても、細胞障害性に先んじて細胞内ROSレベルが上昇し、このROS上昇はcisplatinと比べてcis-Pt(IV)において有意に高いことがハイコンテンツイメージングシステムを用いたタイムラプス解析によって明らかとなった。このとき、細胞内の還元型グルタチオンレベルは有意に低下していた。一方、cisplatinの標的器官であるミトコンドリアに対しては、ROS上昇が認められたタイムポイントにおいて膜電位の異常は認められなかった。したがって、Pt(IV)錯体によるcisplatin耐性の克服には、細胞内グルタチオンの低下が関係していることが示唆された。
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