研究課題/領域番号 |
25460048
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
吉川 豊 神戸女子大学, 健康福祉学部, 教授 (20388028)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金属錯体 / 無機医薬品 / 糖尿病 / 生活習慣病 / 天然物 |
研究実績の概要 |
厚生労働省は、わが国の糖尿病患者数は、生活習慣と社会環境の変化に伴って急速に増加してきていると報告している。糖尿病を発症すると完治させることは難しく、適切な治療が行われないと、糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症などの合併症を引き起こし、失明や人工透析の治療など、多くの合併症が引き起こされる。さらに、糖尿病は脳卒中、虚血性心疾患などの心血管疾患の発症・進展を促進することも知られており、早期発見・早期治療を行うことが最善の策であり、患者のQOLの向上や医療費の増大を抑制するために、日々糖尿病の治療薬開発が進められている。 昨年度の研究実績で、マルトールをリード化合物として用い、酸素原子を硫黄もしくはセレン原子に変換した化合物の中で、インビトロスクリーニング評価で活性の高かった、チオマルトールやセレノマルトールの亜鉛錯体を用い、2型糖尿病モデル動物のKKAyマウスに対する経口投与実験を行った。その結果、両化合物とも、顕著な血糖降下作用を有することが明らかとなり、糖化ヘモグロビン、インスリン抵抗性も改善する傾向が認められた。 新規錯体の合成としては、ヒドロキサム酸誘導体-亜鉛錯体の合成をおこない、インビトロにおける脂肪酸遊離抑制試験において、イオン型の亜鉛よりも高いインスリン類似作用を示すことを明らかにした。 さらに、本年度は、新たな試みとして加温熟成させたユリ科植物の抽出物に亜鉛を加えることで、α-グルコシダーゼやアンジオテンシン変換酵素の働きをインビトロ実験系で抑制することも明らかにし、今後食品由来成分と亜鉛などのミネラルの混合物が、糖尿病が気になる人への食材として有益であることを示す研究データを得た。 昨年度のデータならびに一昨年度のデータをまとめ、学会誌への論文投稿も始めており、現在審査中の段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、平成25年度から27年度の三年間継続して行う研究であり、概ね順調に研究は進展していると考えている。 昨年度は新赴任地へ移動しての二年目であったが、金属と有機物との組み合わせの中で、加温熟成したユリ科植物の抽出物を有機物として使用する価値がある、という新しい発見があり、食品素材として利用できるものと金属の組み合わせはあまり報告されていないため、新規の素材を見つけることができたことが大きな進展であった。 また、亜鉛錯体の投与実験は平成27年度の主たる研究内容と考えていたが、先行して予備的研究を行うことが出来たため、このペースで進めることができれば、当初の目標どおり三年間で成果が出せると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度ということもあり、最終的な結論を目指す研究を推進する予定である。特に、3T3L1脂肪細胞を用いての、亜鉛錯体の抗糖尿病作用のメカニズム解明の実験や、亜鉛錯体を長期投与した際の、インスリン関連臓器(膵臓や肝臓など)への影響を評価する予定である。特に投与経路の検討に関しては、昨年度に行ったゾンデを使用しての経口投与による投与実験をより発展させた形の、エサに被験化合物を混合して投与するという、異なった投与手段による検討を行っていく。 今回の科研費により、多くの種類の錯体を合成してきており、それらをすべてインスリン様作用やαグルコシダーゼ阻害作用の評価実験で使用し、どのような化合物が、糖尿病治療というか点から最も適切であるか、見極める実験も行っていく。 過去二年間の結果と併せて、糖尿病克服を目指した有機・無機ナノ複合体である高活性金属錯体の決定をおこない、将来的には毒性評価に進めていくことができる化合物の提唱を行う予定である。
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備考 |
神戸女子大学 健康福祉学部 健康スポーツ栄養学科 教員一覧 http://achieve.kobe-wu.ac.jp/kwuhp/KgApp?section=300000&courc=322000
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