研究課題/領域番号 |
25460054
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
山口 芳樹 独立行政法人理化学研究所, 糖鎖構造生物学研究チーム, チームリーダー (90323451)
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研究分担者 |
李 秀栄 独立行政法人理化学研究所, 杉田理論分子科学研究室, 研究員 (50390670)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | N型糖鎖 / バイセクトGlcNAc / レクチン / NMR / DCIR2 / 分枝構造 / 相互作用 / PHA-E |
研究概要 |
N型糖鎖の分枝は、多くの場合“共通”の糖鎖構造を有するにもかかわらず、酵素による分枝特異的な糖残基の付加や除去、レクチンの分枝特異的な認識など、糖鎖分枝の“非対称性”の存在が報告されている。本研究ではその非対称性に着目して、多分岐N型糖鎖の立体構造・ダイナミクス・相互作用を明らかにすることを目的とする。平成25年度は以下のことを明らかにした。 1. バイセクトGlcNAc分岐構造をもつ糖鎖の化学合成:本研究を遂行するためにはあらかじめ十分量の均一な糖鎖を調製する必要がある。いくつか知られている分岐のパターンのうち、バイセクト型GlcNAcの付加による糖鎖の分岐に着目してモデル糖鎖4種類を化学的に数10 mgのオーダーで合成することに成功した。また動的立体構造解析を行うために、モデル糖鎖4種類の各種2次元NMR測定を行い1H/13CのNMRシグナルを完全に帰属した。 2.DCIR2レクチンによるバイセクトGlcNAc分岐構造をもつ糖鎖の認識機構:分岐構造を有する分枝特異的な認識を明らかにするため、マウスDCIR2レクチン(mDCIR2)の構造解析を行った。mDCIR2は2本鎖糖鎖の2本の枝のうち、Manalpha1-3分枝を選択的に認識すること、さらにその選択性はbisecting GlcNAc残基によってもたらされていることを明らかにした。 3.PHA-EレクチンによるバイセクトGlcNAc分岐構造をもつ糖鎖の認識機構:PHA-Eレクチンも同様にbisecting GlcNAc残基をもつ糖鎖と優先的に結合するが、PHA-E はmDCIR2と異なりbisecting GlcNAcを直接認識せず、かつ両分枝を同様に認識することを明らかにした。bisecting GlcNAcの存在は糖鎖の取り得るコンフォマー数を減少させ、PHA-Eとの結合におけるエントロピー減少を抑えることにより、親和性を向上させていると考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初レクチンと糖鎖の相互作用解析は次年度に計画していたが、初年度に計画していた内容の大半を達成することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
バイセクトGlcNAc分岐構造をもつ糖鎖のNMRによる動的構造解析、気相電気泳動法・レプリカ交換分子動力学計算による衝突断面積の実測・算出を進める予定である。
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