研究課題
本研究は、分枝型糖鎖の非対称性に着目して、その立体構造・ダイナミクス・相互作用を明らかにすることを目的とする。平成26年度は以下のことを明らかにした。1. 分岐形糖鎖の動的高次構造と相互作用解析:前年度に化学合成を達成したモデル糖鎖4種類を用いて、GnT-III(N-アセチルグルコサミン転移酵素III)との相互作用解析を行った。競合阻害アッセイを行った結果、GnT-IIIの基質認識はManβ1-4GlcNAc部分が重要であることが判明した。本研究で明らかになったGnT-IIIの構造要求性は特異的な阻害剤開発に対して基礎を与える。2.分岐構造をもつ糖鎖のレクチンによる認識と機能発現機構の解明:分岐構造の特異的な認識機構を明らかにするため、ヒトCLEC-2レクチン受容体(CLEC-2)を対象として構造解析を行った。CLEC-2はC型レクチン受容体の1種であり、O-結合型糖鎖を豊富にもつポドプラニンを特異的に認識することが知られていたが、そのメカニズムは不明であった。CLEC-2の結晶構造解析の結果、CLEC-2は分岐型O-結合型糖鎖のひとつの枝のシアル酸残基と周辺のペプチドを同時に認識することで特異性・親和性を獲得していることが明らかになった。3.気相電気泳動法による分岐型糖鎖の解析:気相電気泳動法は、気体との衝突断面積によって対象分子を分離する方法であり、実験的に得られる衝突断面積から立体構造との相関を議論することが可能である。ピリジルアミノ化した分岐型糖鎖60種類を準備し、気相電気泳動法によるデータを取得した。測定した分岐型糖鎖のうち質量が同じで構造が異なる異性体のペアにおいて衝突断面積が異なるものが存在することが判明した。
2: おおむね順調に進展している
予定通り気相電気泳動法によるデータ取得を実施することができた。
分岐構造をもつ糖鎖のNMRによる動的構造解析とレプリカ交換分子動力学計算による衝突断面積の算出を進める予定である。
NMR装置の故障により、修理費に当てるため前年度100万円分を今年度分から前借し、最終的な修理費とのバランス分が残高となった。
今年度、主に消耗品に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 15件、 オープンアクセス 14件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 7件) 図書 (2件)
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