研究課題
生体内での慢性化した炎症反応が、がん・自己免疫疾患・生活習慣病を含むさまざまな疾患発症や病態悪化に寄与することが近年注目されており、「炎症反応の質・量の制御」や「持続的炎症状態成立」の根底にある分子機構の理解につながる基礎的知見を得ることは重要である。現在までに我々は持続的炎症を伴う様々な実験的疾患病態においてTyrosine kinase2 (TYK2)が促進的に寄与することを、欠損マウスを用いた解析によって明らかにし報告した(J Immunol. 2011 187(1): 181, Int Immunol. 2011 23(9): 575, Int Immunol. 2014 26(5):257)。平成26年度は上記成果をもとに解析を進めた。昨年度までに培養細胞を用いた解析よりTyk2がケモカインCxcl10遺伝子発現に関与することを見出したことから、in vivoの炎症病態モデルにおいてもCxcl10遺伝子発現にTyk2が役割をもつか否か調べた。マウスにおいてヒト乾癬病態に類似の皮膚炎を誘導できる実験モデルとして、マウス皮膚へのイミダゾキノリン誘導体(イミキモド)塗布により皮膚炎を誘発させ、Cxcl10遺伝子発現を検出した。野生型マウスに比べTyk2欠損マウスではCxcl10遺伝子発現の誘導が有意に抑制されることを見出した。また、野生型マウス皮膚へのイミキモド塗布による乾癬様病態の誘導は、Cxcl10の受容体であるCXCR3の機能を阻害する抗CXCR3中和抗体投与によって有意に抑制された。以上の結果より、マウスにおける乾癬様病態形成においてTYK2がCxcl10ケモカインの発現誘導を介して病態悪化に寄与する可能性を見出した。現在これらの分子機構解析を引き続き進めている。
2: おおむね順調に進展している
動物個体レベルでの炎症応答とケモカイン産生におけるTYK2の役割を解析し、in vivoの実験系においてもTYK2がケモカインCxcl10産生に寄与することを示した。またCxcl10機能を阻害する抗CXCR3中和抗体をもちいた実験から、Cxcl10が病態形成に一定の役割をもつことも確かめることができた。
マクロファージにおいて見られるケモカイン産生低下などの機能変化が、Tyk2欠損により引き起こされる分子機構について不明点が多く残されているため、今後解析を進めて明らかにする予定である。
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