研究課題
種々のサイトカインシグナル伝達を担うJakチロシンキナーゼTyk2の新たな機能を同定するために遺伝子欠損マウスを用いて解析を進めた。平成27年度はTyk2欠損マクロファージの機能解析よりTyk2が恒常的なインターフェロン(IFN)産生およびシグナル伝達への寄与を通じCxcl10等のケモカイン遺伝子の誘導に関わることに加え、複数の脂質代謝関連遺伝子の発現に対し抑制的役割をもつことを見出した(論文準備中)。脂質代謝関連遺伝子の抑制制御は、Jakキナーゼ活性やI型IFNシグナルへの依存度が標的遺伝子ごとに異なり、実験結果からキナーゼ活性やI型IFNに非依存的にTyk2が遺伝子発現を制御するユニークな分子機構の存在も示唆された。マクロファージにてTyk2は炎症応答と脂質代謝系制御の双方に関わりマクロファージの性質を炎症促進性に維持すると考えられ、炎症を効果的に収束させるためにTyk2機能阻害が有効であることが示唆された。難治性皮膚疾患である乾癬のマウスでの病態モデルはTyk2欠損により症状が抑制される。乾癬病変部を構成する表皮角化細胞でのTyk2の役割の解析を進めた。ヒト正常角化細胞を用い乾癬で重要なサイトカインIL-17Aが角化細胞を活性化させる際の遺伝子発現変動を網羅的に解析した。その結果IL-17Aにより角化細胞内で誘導されIL-17A応答性遺伝子群の発現誘導を司る転写調節タンパク質としてIκB-ζを同定した(Int Immunol. 2016, 印刷中)。このIL-17A刺激時のIκB-ζmRNA誘導はTyk2依存的に起こることも見出し学会発表した(論文準備中)。角化細胞でTyk2はIL-17A刺激後のIκB-ζ発現誘導を仲介し角化細胞活性化と炎症増幅に関与すると示唆された。今後の解明により、角化細胞の活性化を人為的に制御し乾癬等の皮膚疾患をコントロールする新手法考案につながる将来性を有する。
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http://www.pharm.hokudai.ac.jp/