研究課題/領域番号 |
25460065
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 信行 京都大学, 薬学研究科(研究院), 名誉教授 (10110610)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分泌性タンパク質 / マウス / 遺伝子欠損 / 肥満 / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
1. 高脂肪食飼育時のneudesin KOマウスの交感神経の活性化 一般的に交感神経が活性化するとエネルギー消費も亢進する。そこで、高脂肪食飼育時におけるneudesin KOマウスのエネルギー消費の亢進に、交感神経の活性化が寄与している可能性を考えて、解析を行った。その結果、交感神経の活性を反映する心拍数や脂肪組織におけるNEの含量が増加していることが明らかになった。これらの結果から、高脂肪食飼育時においてneudesin KOマウスの交感神経が活性化している可能性が示唆された。さらに、neudesin KOマウスの血漿中のNE濃度にも増加が認められた。血中のNEは交感神経節後神経の相同器官である副腎髄質から分泌されるため、neudesin KOマウスの副腎髄質の機能も亢進している可能性が示唆された。 2. 高脂肪食飼育時のneudesin KOマウスの脂肪組織のエネルギー消費の亢進 交感神経が活性化することにより脂肪組織においてエネルギー消費が亢進することが知られている。そこで、高脂肪食飼育時におけるneudesin KOマウスの脂肪組織で熱産生因子Ucp1や脂肪酸酸化関連因子Pgc-1α、 Pparα、 Cpt1bの発現を測定した。その結果、neudesin KOマウスのWAT、BATのいずれにおいてもUcp1や脂肪酸酸化関連因子の発現が増加していることが明らかになった。また、熱産生や脂肪酸酸化には脂肪組織に蓄えられた中性脂肪が分解されることで生じる脂肪酸が基質として用いられる。この脂肪分解のプロセスすなわちリポリシスも交感神経の活性化によって亢進するが、高脂肪食飼育時におけるneudesin KOマウスのWATでリポリシスが亢進していた。これらの結果から、neudesin KOマウスの脂肪組織において熱産生、脂肪酸酸化やリポリシスが亢進し、エネルギー消費が亢進していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載した通り、25年度はNeudesin KOマウスが肥満誘導性のインスリン抵抗性の出現や脂肪肝の発症に強い耐性を示すことは明らかにした。26年度はこれらの耐性のメカニズムの解明を目指し、そのメカニズムとして、高脂肪食飼育時のneudesin KOマウスの交感神経の活性化や脂肪組織のエネルギー消費の亢進を明らかにした。それらの知見は今後の詳細なメカニズム解明やNeudesin受容体解明に重要な手掛かりを与えるものである。従って、これまでの研究成果から本研究計画は概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
1. 高脂肪食で飼育したNeudesin遺伝子欠損の解析によるNeudesinのエネルギー代謝調節における役割の解明 26年度の研究計画の実験内容を引き続き進める。平成27年度以降の新たな研究計画は下記の通り。 1) Nerve growth factor (NGF)添加によりラット副腎髄質由来のPC12細胞をカテコラミン産生神経細胞に分化させる。さらに、その分化神経細胞にneudesinを添加し、カテコラミン産生能を検討する。2) 6-OHDA投与して交感神経系破壊でマウスに高脂肪食飼育を行い、その白色脂肪組織(WAT)、肝臓及び心臓の重量を測定する。3)高脂肪食飼育した交感神経系を破壊neudesin KOマウスの熱産生関連因子と脂肪酸酸化関連遺伝子の発現量を定量する。 2. Nuedesin受容体の同定とそのシグナル伝達機構を解明 1) His-tagで標識した Neudesin組換えタンパク質を培養神経前駆細胞あるいは培養前駆脂肪細胞に作用させる。その後、架橋化試薬を加え、このリガンド-受容体間を共有結合させる。細胞膜タンパクを回収する。His-tagを利用したアフィニティークロマト法によりNeudesin-受容体タンパク質の精製を行う。2) Neudesin受容体高発現細胞系を用いて、Neudeisn細胞内情報伝達系とその制御メカニズムを解明する。
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