研究課題
平成25年度の研究時に樹立した肺がんA549細胞のシスプラチン(CDDP)耐性株とその非耐性親株を用いた検討において、肺がん細胞のCDDP耐性化に一酸化窒素(NO)の産生亢進とそれに伴うプロテアソーム活性化やアルドケト還元酵素(AKR)1B10の発現誘導が関わることを示唆した。また、NOとスーパーオキサイドアニオンから非酵素的に生成するパーオキシナイトライトはNrf2を著明に活性化することを推察した。CDDP耐性化A549細胞はいくつかの抗がん剤に対して交叉耐性を示し、それはドキソルビシン、マイトマイシンCや5-フルオロウラシルなど酸化ストレス誘導を抗がん作用の一序とする抗がん剤において顕著であった。また、当研究室で今までに見出した2種のAKR1B10高選択的阻害剤での処理は本耐性細胞のCDDP感受性を著明に高めたことから、AKR1B10阻害剤は肺がん細胞のCDDP耐性克服効果を持つことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
肺がん細胞の抗がん剤耐性化におけるAKR1B10の役割を解明するために、平成26年度は培養細胞を用いて種々検討を行った。本年度に予定していたCDDP耐性化への増殖因子や他抗酸化酵素の関与については調べることができなかったが、その代わりにCDDP処理下にA549細胞中で高濃度産生されるNOの役割を詳細に調べることができたため、本申請研究はほぼ順調に進行していると思われる。
平成27年度はCDDP耐性と酸化ストレス誘導の関連性を明示するために、抗酸化酵素(グルタチオン転移酵素や他AKR)の変動をリアルタイムPCRにて精査する。また、AKR1B10阻害剤の肺がん細胞耐性克服効果の機序を検証するために、CDDP耐性化における細胞死マーカーの変動(ミトコンドリアマーカー、カスパーゼ活性など)やフローサイトメトリーによる細胞周期測定等を詳細に調査する。さらに、肺がんの抗がん剤耐性克服効果を調べるために、動物モデルを構築して今までに見出した候補化合物の効果を評価する予定である。
本年度計画していた各種増殖因子の産生に関する検討ができなかった。また、予定していた国際学会での発表を見送ったため、これらに関する経費の残額が生じた。
各種増殖因子の産生量を測定するためのELISAキットと抗体等、ウエスタンブロットおよびPCR分析用の試薬等を購入するためにおそよ50~60万円が必要である。また、国際学会や国内学会での発表も予定している。
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