研究課題
基盤研究(C)
申請者らが同定したWnt/β-カテニン経路阻害剤活性を有する化合物IMU14とその誘導体の作用機構の解明を試みている。これまでの解析を基に「IMU化合物は、本来のプロテアソーム系によるβ-カテニンの分解を、リソソーム系にスイッチすることによってWntシグナルを抑制する。」という仮説をたてた。本研究は、この仮説の検証を主な目的としている。これまでに、IMU化合物がβ-カテニンやNotchと物理的に相互作用すること明らかにしている。他方、膜タンパク質であるNotchのエンドサイトーシス時に、β-カテニンのリソソームによる分解を誘導することが知られている。そこで、IMU化合物によるWnt/β-カテニン経路の阻害へのNotchの関与を想定し、siRNAによるNotchのノックダウンによるIMU化合物の薬効への影響を解析した。Notch1/2ダブルノックダウンを行ったところ、IMU化合物によるβ-カテニン/TCF依存的転写活性化の抑制作用が減弱された。すなわち、IMU化合物によるWnt/β-カテニン経路阻害は、Notch1/2に依存することが示唆された。IMU誘導体に由来する自家蛍光と蛍光性オルガネラマーカーとの2重染色を行った。IMU化合物が蓄積するオルガネラは、少なくとも部分的にはリソソームマーカーの分布と一致していた。さらに、IMU化合物処理によって、オルガネラの量やサイズに変化が見られるかについても検討したが、現在のところ際立った変化は認めていない。平成26年度以降に行う動物実験の予備実験も始めた。ゼノグラフト実験に加えて、Apc(Min)マウスを用いた大腸がんの発がん過程への影響も検討できる体制を築いた。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度に予定していた内容に加え、平成26年度以降に行われる予定の動物実験の準備も行った。予想と異なる結果を得た部分もあるが、概ね順調に進捗している。
V型プロトンポンプ阻害剤バフィロマイシを用いたリソソームの酸性化阻害による、IMU化合物誘導性β-カテニン分解への影響についても計画書にしたがって検討した。しかし、バフィロマイシンとIMU化合物の併用による細胞毒性の影響が大きく結論には至っていない。今後、他のリソソーム機能制御因子に対する阻害剤やノックダウンを試みる。それ以外は、当初の研究計画に従って、研究を推進する。
研究試薬の価格の割引によって生じた差額分である。平成25年度に必要な試薬は購入済み。平成26年度の研究費として有効利用する。
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Chem. Biol.
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10.1016/j.chembiol.2014.02.015. Epub 2014 Mar 27.
PLoS One
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