研究課題
Wnt/β-カテニン経路を阻害する活性を有する化合物として申請者らが同定したIMU14とその誘導体の作用機構の解明を試みている。これまでの解析から「IMU化合物が、本来のプロテアソーム系によるβ-カテニンの分解を、リソソーム系にスイッチすることによってWntシグナルを抑制する。」という仮説をたて、この検証を試みている。膜タンパク質Notchのエンドサイトーシス時に、β-カテニンのリソソームによる分解を誘導することが知られている。昨年度は、Notch1/2ダブルノックダウンを行い、IMU化合物によるβ-カテニン/TCF依存的転写活性化の抑制への影響を観察した。今年度は、V型ATPase阻害剤であるconcanamycin Aを用い、IMU化合物の作用発現へのリソソーム系の関与を検討した。コントロールとして用いたプロテアソーム阻害剤MG132やpan-caspase阻害剤Z-VAD存在化では、IMU化合物によるβ-カテニンの分解が観察された。一方で、concanamycin A存在化では、β-カテニンの分解が観察されなくなった。したがって、IMU化合物によるβ-カテニンの分解が、Notch1/2に加えてリソソームにも依存することが示唆された。ApcMin/+ マウスにデキストラン硫酸ナトリウムを投与することで、大腸腫瘍を誘導することができる。このモデルを用い、IMU化合物の抗腫瘍効果の解析を試みた。100 mg/kgまでIMU化合物を経直腸投与したが、顕著な抗腫瘍効果は観察されなかった。IMU化合物はエステル結合を含むため、in vivoでの安定性の問題が考えられた。そこで、マウス血清を用いて耐分解能を確認したところ、血清によってIMU化合物の活性低下が観察された。エステルをアミドに変換した誘導体を含め、約50の誘導体の活性評価を行ったが、現在のところ活性と安定性が格段に改善された誘導体は得られていない。今後も引き続き、誘導体の探索を行う。
2: おおむね順調に進展している
in vitro解析は順調に進捗している。in vivoでの活性が検出できていないが、化合物の特性である可能性があるため、類縁誘導体を用いる方向で進める。
in vivo活性が期待できる誘導体の探索を進めると同時に、投与方法や投与量を再度検討する。in vitro解析については、研究計画に従って推進する。
納入業者による値引きやシンポジウムに招待されたことにより旅費の支払いが不要になったため。
次年度の研究活動に有効利用する。
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