研究課題
Wnt/β-カテニン経路阻害剤として申請者らが同定したIMU14とその誘導体の作用機構の解明を試みた。これまでの解析から「IMU化合物が、本来のプロテアソーム系によるβ-カテニンの分解を、リソソーム系にスイッチすることによってWntシグナルを抑制する。」という仮説をたて、この検証を試みた。膜タンパク質Notchのエンドサイトーシス時に、β-カテニンのリソソームによる分解を誘導することが知られている。これまでに、IMU化合物によるβ-カテニン分解が、Notch1/2とリソソームに依存することを明らかにしてきた。今年度は、IMU化合物によるβ-カテニンとNotch1との物理的相互作用への影響について検討した。MycまたはFlagタグ付加Notch1変異体発現ベクターを用い、タグ抗体による免疫沈降を行った。共沈するβ-カテニンをウェスタンブロットによって解析したところ、Notch1細胞質領域と共沈するβ-カテニン量が、IMU化合物処理によって増加した。したがって、IMU化合物は、β-カテニンとNotch1間の結合を誘導し、Notchとリソソーム依存的にβ-カテニンを分解すると考えられる。今年度は新たな35誘導体を創成し構造活性相関解析を行った。これらの誘導体のうち、IMU1003をはじめとする8誘導体が比較的高いWnt/β-カテニン経路阻害活性を維持していた。そこで、IMU1003を用いて、昨年度思わしい結果が得られなかった抗腫瘍効果の検討を再度試みた。ApcMin/+マウスを用いたデキストラン硫酸ナトリウム誘導性大腸腫瘍モデルへ、IMU1003を30 mg/kgで連日腹腔内投与した。その結果、コントロールに比較してIMU1003投与群では、発生腫瘍数や腫瘍サイズが有意に減少した。したがって、IMU1003はβ-カテニン依存性腫瘍に対して抗腫瘍効果が期待できる。
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