研究課題/領域番号 |
25460071
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
大橋 綾子(小林綾子) 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (90272484)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | オルガネラ / 連携 / 線虫 / RNAi / 遺伝子スクリーニング / 薬学 / 小胞輸送 / 腸 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「線虫C.elegansの腸細胞をモデルとし、申請者らが発見した腸細胞内非酸性オルガネラ(通称HEBE顆粒)と連携して、各種オルガネラや、脂肪滴、凝集物蓄積体などの出現に影響する遺伝子群を特定し、その遺伝子間相互作用を解明すること」である。平成26年度は、線虫C. elegansの腸内オルガネラの形成と維持に関わる遺伝子の同定に関して、①網羅的なRNAiスクリーニングを更に加速すると共に、②鍵分子と予想された遺伝子cdc48について解析を進めつつ、更組織特異的RNAiの準備を開始した。
①平成26年度は、前年度に引き続き、線虫腸内顆粒(特にHEBE顆粒)の形成・成熟異常をもたらす遺伝子を選別するためのfeeding RNAiスクリーニングを加速的に行った。本年度末の時点で解析数は12,000クローンのうち、9,000クローンに達した。成長遅延が著しいクローン以外では、ほぼ確実に候補遺伝子群を選別でき、HEBE顆粒の減少が顕著に見られる数十の陽性クローンを新たに得た。 ②線虫腸における各種オルガネラの局在マーカーを発現する線虫株を入手もしくは作成した。これらの株を用い、先行して解析を進めるcdc48 (cdc-48.1およびcdc-48.2)のRNAiが、既に解析していた複屈折顆粒に加えて、HEBE顆粒(HAF-4::GFP陽性)、自家蛍光酸性顆粒(GLO-1::GFP陽性)、および脂肪滴(DHS-3::GFP)の形成に及ぼす影響を調べた。その結果から、cdc-48の発現量低下は、GLO-1陽性複屈折顆粒の肥大化と蓄積を引き起す一方で、HEBE顆粒と脂肪滴の形成を著しく阻害することが示唆された。 また、組織(腸、皮下、筋肉、生殖腺)に特異的なRNAiを可能にする線虫株を入手し、予備実験に着手した。 [連携研究者 岩手医大・薬学部 白石博久 丹治貴博 錦織健児]
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主目的である「feeding RNAiを用いた網羅的スクリーニング」は、予定通りに着実に進行している。技術補佐員によるランダムスクリーニングを加速する一方で、鍵分子を中心とした解析を進めることができた。更に、RNAiによる腸細胞内顆粒への影響が、腸細胞に対する直接の効果によるのか、他組織へのRNAi効果を介した効果を知るために、組織特異的RNAiの実験準備にも着手できた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も「feeding RNAiを用いた網羅的スクリーニング」は計画通り推進する。デジタルマイクロスコープでのプレスクリーニングはほぼ理想的かそれ以上に進んでいるが、予想よりもポジティブクローンが多いため、高倍率微分干渉顕微鏡下での観察を次年度は精力的に進める必要がある。 GFP標識された各種オルガネラマーカータンパクを発現する線虫株とRNAiの組み合わせや、変異体との掛け合わせにより特定のオルガネラ消失を観察する。また、電子顕微鏡レベルのオルガネラ異常の観察も行う計画である。 また、HEBE顆粒の消失を指標に得られた陽性クローンについて、その遺伝子の発現が腸細胞自身で必要かどうかを、組織特異的RNAiにより解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度のスクリーニングは、連携研究者の協力があったため、本研究課題採択により継続して雇用できた実験補助員が3名となり、プレスクリーニングを予想以上に精力的に進めることができた。謝金以外の出費が予想よりも少なくなったのは、本研究に関連して年度限定の学内研究費(ただし謝金には用いられない)が得られたためである。また、研究代表者の学内外業務のために、海外での成果発表に参加できなかったため、旅費も支出がなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度も、スクリーニングに必要な実験補助に対する謝金が主な研究費使用用途となる。次年度はプレスクリーニングで得られた陽性各クローンに関して、光学高倍率顕微鏡観察並びに蛍光観察の作業が増大する見込みの為、これらに関わる消耗品を購入する。また、最終年度であり、得られている成果の一部をまとめる論文作成費用も申請する。
|