研究実績の概要 |
本研究の目的は、「線虫C.elegansの腸細胞をモデルとし、申請者らが発見した腸細胞内非酸性オルガネラ(通称HEBE顆粒)と連携して、脂肪滴、凝集物蓄積体などの各種オルガネラの出現に影響する遺伝子群を特定し、その遺伝子間相互作用を解明すること」である。平成27年度は、線虫C.elegansの腸内オルガネラの形成と成熟に関わる遺伝子の同定に関して、①網羅的なRNAiスクリーニングを加速すると共に、②鍵分子と予想された遺伝子cdc48(cdc-48.1及びcdc-48.2)についての解析を進め、更に、③組織特異的RNAiをV-ATPaseのサブユニットを例に実施した。 最終年度を迎えた本研究の最大の成果は、線虫腸内顆粒(特にHEBE顆粒)の形成・成熟異常をもたらす遺伝子を選別するためのfeeding RNAiスクリーニングが、計画通りに完了したことである。Open Biosystemsより購入したRNAi feeding library の11,479 クローンに対して、1齢幼虫にRNAiを施し成虫にまで成長したのは11,263クローンであった。そのうち、高倍率微分干渉顕微鏡下で、HEBE顆粒の形成・成熟異常が観察されたのは142クローンであった。 線虫の持つ遺伝子の1%が、新しく見出したオルガネラHEBE顆粒の形成や成熟に関与しており、その遺伝子の多くは代謝関連遺伝子であるという事実は、HEBE顆粒が栄養環境やその変化に応じた生理機能を有していることを支持するものと考えられる。また、cdc48遺伝子の解析を通じ、HEBE顆粒と、凝集物蓄積体(複屈折顆粒)や脂肪滴とのオルガネラレベルでの連動性を初めて指摘できた。今後は、確立した組織特異的RNAi技術等を用いて、組織を超えた遺伝子間相互作用も解析していきたい。 [連携研究者 岩手医大・薬学部 白石博久 丹治貴博 錦織健児]
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