研究課題
基盤研究(C)
我々は、システイン生合成に必須で、なおかつ硫化水素産生酵素として知られる二つのtranssulfuration酵素(cystathionine beta-synthase(CBS)とcystathionine gamma-lyase(CTH))の遺伝子欠損マウスや最新のOMICS技術を利用して含硫アミノ酸代謝の生理的役割を明らかにし、臨床応用に繋げることを目指している。本課題は、①絶食マウスの心臓が飽食マウスの心臓よりもランゲンドルフ心虚血再灌流実験における機能障害の程度が小さい、②(マイクロアレイ解析から)絶食マウス心臓では飽食マウス心臓よりもCBS遺伝子発現量が大きい、③硫化水素ドナーを事前に投与したマウスの心臓は対照マウス心臓に比べ、ランゲンドルフ心虚血再灌流障害の程度が小さい、④その硫化水素ドナー投与による心機能保護効果はCTH欠損マウスでは確認出来ない、という初期知見をもとに実験を進めている。本年度は、①マイクロアレイ解析の結果得られた絶食による心臓での特定遺伝子の発現変化を定量的RT-PCR解析により確認し、②絶食によるタンパク質発現変化をEttan 2D-DIGEシステムを用いた網羅的Proteome解析により調べ、③絶食によるランゲンドルフ心虚血再灌流障害からの保護作用に対する各種阻害剤の影響を調べ、④硫化水素ドナーによる心機能保護効果がCBS欠損マウスにおいても見られないことを見出し、⑤心筋保護作用に関わりうる活性硫黄分子種の定量法についての検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
マイクロアレイ解析での遺伝子発現変化の一部は定量的RT-PCRにより再確認され、また絶食による心臓でのタンパク質発現変化は(肝臓などと比べて)大きなものではなく、二次元電気泳動上では確認されないような微細な化学修飾(Post-translational modification)、あるいは発現量が小さく蛍光染色や銀染色では検出されない機能タンパク質の量あるいは質の変化に基づくであろうことが網羅的Proteome解析より示唆された。活性化硫黄分子種の定量化は経験を有する他ラボとの共同研究により進めており、おおむね順調に進展している。
硫化水素ドナーの効果がCBS欠損マウスとCTH欠損マウスの両方で確認されなかったことより、両マウスに共通の表現型である高ホモシステイン血症が関与する可能性を探るため、野生型マウスに高メチオニン食を与えて高ホモシステイン血症を食餌性に誘導した後、硫化水素ドナーの効果を調べる。また、絶食あるいは硫化水素ドナー投与に伴う活性化硫黄分子種の量と質の変化を調べるべく定量法の確立を目指す。
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