研究課題
血中ホモシステイン濃度の上昇は、心血管病発症の独立の危険因子として知られている。また硫化水素アニオン(HS-)は、虚血再灌流(IR)障害から心筋を保護することが実験的に示されている。血中ホモシステインレベルとHS-の内因性産生は共に、シスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)とシスタチオニンγ-リアーゼ(CTH)の二つのトランススルフレーション酵素により主に調節される。我々はトランススルフレーション経路が心筋虚血に対する適応応答の成立に重要と考え、IR障害に対する絶食誘導性心保護作用におけるホモシステイン、HS-、そしてこれら酵素の役割を、高ホモシステイン血症を呈するCBS欠損マウスおよびCTH欠損マウスを用いて検討した。Langendorff灌流心を25分間の全虚血後、60分間の再灌流を行い、その間の圧変化を経時測定した。野生型マウスの二日間の絶食は再灌流後の左室機能障害を緩和したが、この現象はCBS欠損マウスとCTH欠損マウスでは認められなかった。しかし絶食による心臓での各種Nrf2標的抗酸化関連遺伝子の心臓での発現は、野生型マウスとCTH欠損マウスの両者で確認された。IR実験24時間前の野生型マウスへのHS-ドナーの腹腔内投与により心筋機能回復の改善が見られたが、この現象はCTH欠損マウスと(中程度の高ホモシステイン血症を示す)高メチオニン餌投与野生型マウスでは認められなかった。モノブロモビマン誘導体化法を用いて活性イオウ分子種の定量解析を行った所、マウス心臓およびin vitro反応系において、ホモシステインが効率的にHS-を捕捉してホモシステインパースルフィドを形成することが判明した。循環血中の過剰なホモシステインは、内因性HS-を捕捉しホモシステインパースルフィドを形成することにより、HS-を介するIRからの心筋保護作用に拮抗することが考えられる。
2: おおむね順調に進展している
in vivoにおける活性イオウ分子種の定量測定にはいまだ成功していないが、初期ex vivoランゲンIRデータとin vitro系におけるホモシステインパースルフィドの定量データまでをまとめ、論文発表(J Mol Med誌)することができた。
モノブロモビマンを用いる活性イオウ分子種の定量解析は、in vivoサンプルだけではなくin vivoサンプルにおいても難しいことが判明した。残る期間は別の誘導体化試薬を検討する。また、絶食による代謝リモデリングは心臓のみならず全身に及ぶ。そこで全身性代謝リモデリングの心臓への影響を調べる。
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