研究課題
我々はマウスのランゲンドルフ灌流心を用いた虚血再灌流実験において、マウスの48時間絶食が心筋細胞保護的に働くことを見出し、そのメカニズムを探った。絶食により、心臓においてCBS遺伝子、肝臓においてCTH遺伝子の発現が上昇したことから、これらのTranssulfuration酵素が細胞保護に重要な役割を果たすことが示唆された。そこで、それぞれの遺伝子欠損マウスを用いて、この細胞保護効果の有無を調べたところ、完全に欠失していた。両酵素は生体内硫化水素産生酵素として知られるため、硫化水素ドナーの効果を調べた。硫化水素ドナーであるNaHSをマウス腹腔内に1日前に投与したマウスの心臓では、虚血再灌流障害の程度が大きく減弱していたが、驚いたことにその効果はCBS欠損マウスとCTH欠損マウスの双方で確認されなかった。両者に共通する表現型である高ホモシステイン血症に着目し、野生型マウスに高メチオニン食を一週間与えて中程度の高ホモシステイン血症を誘導したのちNaHSをマウス腹腔内投与したところ、その細胞保護効果が大きく減弱しており、高ホモシステイン血症が硫化水素の効果を減弱させることが推察された。試験管内でホモシステインとNaHSを混ぜるとホモシステインパースルフィドが効率よく産生し、またCTH欠損マウス心臓において野生型マウス心臓よりも高濃度のホモシステインパースルフィドが検出された。これらの結果から、ホモシステインの新規作用機序として内在性硫化水素シグナルの減弱が考えられた。最近多くの知見から、内在性硫化水素あるいは活性イオウ分子種が各種親電子物質のタンパク質システイン残基修飾からの保護に働くことが示唆されているが、その作用にイレギュラーなホモシステインの蓄積は拮抗しうると考えられた。
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