研究課題/領域番号 |
25460074
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
稲留 涼子 東京薬科大学, 生命科学部, 研究員 (90408691)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / SRF |
研究実績の概要 |
CRAGは、脊髄小脳変性症の原因タンパク質である異常伸長したポリグルタミンタンパク質(PolyQ)の分解を促進すること、およびCRAGは転写因子SRFを活性化することで神経細胞保護することがわかっている。CRAGはROSを産生するストレス刺激依存的に核内に移行するが、CRAGの核内移行メカニズムは不明であった。本研究により、CRAGのK163がSUMO化修飾されることにより、核内移行するというCRAGの核内移行メカニズムが初めて明らかにされた。本研究で用いたSUMO化されないmutantであるCRAG K163Rは核膜周辺に集積することが観察されたことから、CRAGは核膜周辺でSUMO化される可能性が高い。タンパク質の核内移行は核膜孔複合体(Nuclear pore complex)を介して行われる。Nup358/RanBP2は核膜孔複合体に局在するSUMO E3-ligaseであり、いくつかの蛋白質の核内移行を制御する。CRAGもNup358などの核膜孔複合体に局在するSUMO E3-ligaseによって核内移行を制御されている可能性が示された。またCRAGはK163番目にSUMO化のコンセンサス配列consensus sequence wKx(D/E) (where w is a large hydrophobic residue) を保持する。このコンセンサス配列はSUMO E2のUbc9が直接認識しSUMO化修飾に関与している可能性を示唆した。またCRAG のSUMO化は単に核移行だけに必要ではない。SUMO化されないmutantであるCRAG K163Rに核移行シグナルを付加して強制的に核移行させてもSRFの活性化は認められなかった。この結果はCRAGのスモ化修飾は核移行のみならず核内でもSRFの活性化に必須であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRAGの脳の部位特異的な欠損マウスを作製した。とくに大脳皮質・海馬特異的な欠損マウスおよび小脳プルキンエ細胞特異的に欠損マウスの作製に成功した。またCRAGによるSRFの活性化機構においてCRAGのスモ化を認識して核移行していることを見いだした。思いがけない発見であり、今後の展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
CRAGの脳の部位特異的な欠損マウスを作製した。とくに大脳皮質・海馬特異的な欠損マウスおよび小脳プルキンエ細胞特異的に欠損マウスを作製したところ、CRAGの生体内の重要性を示す予備的な結果が得られつつある。今後さらなる解析が必要である。またCRAGのスモ化の制御機構を解明する必要がある。とくにCRAGをSUMO化修飾するligaseを同定することは今後の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた謝金・人件費として使用しなかったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
謝金・人件費もしくは細胞培養の試薬(消耗品)として使用する予定である。
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