研究課題/領域番号 |
25460075
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
土方 貴雄 武蔵野大学, 薬学研究所, 教授 (70189786)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロRNA / SV40 / シード配列 |
研究概要 |
SV40ゲノムにはマイクロRNAのmiR-S1-5pとその相補鎖に相当するmiR-S1-3pがコードされているが、HEK293細胞へのSV40ゲノムのトランスフェクションによりいずれのmiR-S1の発現もqPCRにより確かめられた。miR-S1-3pの発現量はトランスフェクション後から増加し、96時間後には12時間後の発現量の約100倍に増加するのに対し、miR-S1-5pの発現量はトランスフェクション後時間経過による有意な変化は認められなかった。 つぎにmiR-S1-5pとmiR-S1-3pのマイクロRNAがタンパク質の発現抑制効果を実際にもつか否か、さらにどの配列が抑制効果において重要なのかをルシフェラーゼ・レポーターアッセイを用いて検討した。その結果、miR-S1-3pの相補配列をもつレポーターの活性は約20%までに減少するのに対し、miR-S1-5pの相補配列をもつレポーターは約90%まで減少するにすぎなかった。したがって、miR-S1-3pの方がより有効な抑制効果をもつと考えられた。さらに、miR-S1-3pのどの配列が抑制効果に重要であるかを調べたところ、5’端のGCCTGTTTCAの配列が必要であった。このことはマイクロRNAがその5'端2bp-8bpにシード配列をもち抑制に重要であることに一致する。したがって、miR-S1-3pのシード配列はCCTGTTTであると予想される。 以上の結果から、細胞内に感染したSV40は時間経過とともにmiR-S1-3pを発現を増加させ、miR-S1-3pのシード配列であるCCTGTTTを通して細胞内タンパク質の発現を抑制する可能性がある。この結果から、このシード配列の相補配列AAACAGGをもつタンパク質がmiR-S1-3pの標的タンパク質候補として絞ることができたという点で非常に重要な結果が得られたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SV40ゲノムをトランスフェクションすることができ感染に近い状況が細胞内で再現できたため、温度感受性T抗原などの実験を省略することができ進展につながった。 当初予想できていなかったが、T抗原を導入しただけでもmiR-S1-3pやmiR-S1-5pが発現するということがわかったためいくつかの実験を変更することとなった。T抗原をコードするアミノ酸コドンを変更することによりmiR-S1を発現しない変異T抗原cDNAを作成し細胞にトランスフェクションし、T抗原が純粋に細胞の自然免疫に与える影響を調べることができた。実験は変更したが、アレイ解析も行いプレリミナリーではあるが順当に結果が得られているので問題ないと考えている。 自然免疫応答に関する実験はアレイ解析やリアルタイムPCRでの解析は進んでおり順調だが、まだタンパク質レベルでの確かめがなされていないのでその点が唯一遅れている点かもしれない。しかしながら、申請計画段階でもすべての計画が25年度で終わらないことを予想していたので、タンパク質レベルでの実験を行っていないのは遅れとまでは言えなく、順当の進展だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
基礎データや新しい知見がいくつか得られているので、今後は新しい知見を論文に組み込んでいくことを念頭に実験とデータの採取を行う。つまり、得られている新しい発見を裏付ける必要十分条件なデータをとれる実験を計画し進めていく方式に切り替えていく。具体的に言えば、論文作成と実験とを交互に繰り返しながら研究を進めていく予定である。 これまではHEK細胞でのみ実験を行っていたが、今後は血液細胞や線維芽細胞においても新しい知見が当てはまるか否かについても検討していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初温度感受性のT抗原を作成し実験を行う予定であったため、備品としてCO2インキュベーターを購入する予定であった。しかしながら、SV40ゲノムを導入することでmiR-S1の発現が観察されたので、温度感受性のT抗原の作成が不要となり備品としてCO2インキュベーターの購入も不要となった。そこで備品代の一部をアレイ解析の費用にあてたため現況の助成金の残りとなった。 繰り越し分に関しては、これまでHEK293細胞で得られた結果を他の組織細胞、繊維芽細胞や血球系の細胞でも行い確かめるよう実験を拡張したため、数種類の細胞の購入やその培地、さらにそれら細胞への遺伝子導入のための特殊トランスフェクション試薬の購入に充てる。 翌年度分として当初から請求した助成金に関しては、計画通りレポーターアッセイ、チップアッセイ、アレイ解析費用などの消耗品として使用する予定である。
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