研究実績の概要 |
最終年度に、本研究の目的であるSV40マイクロRNA・miR-S1が宿主細胞の自然免疫応答に与える影響についての知見を得ることができた。野生型SV40ウイルスベクターとmiR-S1発現が欠如するSV40ウイルスベクターをHEK293細胞にトランスフェクションし、炎症性サイトカインであるIL8,IL17F,TNFαの発現をqPCRにより半定量化し、それぞれのベクターがサイトカイン発現に与える影響を調べた。その結果、野生型SV40ウイルスベクターの発現細胞よりもmiR-S1発現欠損のSV40ウイルスベクター発現細胞においてTNFαとIL17Fのサイトカインの発現が有意に高くなった。この原因として、miR-S1発現によるサイトカイン発現の抑制あるいはT抗原の発現がサイトカインの発現の増加を促していることが考えられた。そこで、miR-S1発現ベクターをトランスフェクションすることで前者の可能性について検討した結果、miR-S1発現によりIL17Fの発現は増加し、IL8やTNFαの発現に変わりはなかった。次に、後者の可能性についてsmall T抗原あるいはlarge T抗原発現ベクターをトランスフェクションし同様にサイトカインの発現について検討した。その結果、smallならびにlargeT抗原発現によりTNFαやIL17Fの発現は有意に増加した。さらにT抗原の発現量とそれぞれのサイトカイン発現量との相関を調べるために、トランスフェクションするT抗原発現ベクターの量を変えることでサイトカイン発現量を検討した。その結果、TNFαやIL17Fの発現量はT抗原の発現量増加とともに上昇した。以上の結果から、SV40マイクロRNA・miR-S1は、直接的に宿主細胞のサイトカイン発現を抑制するのではなく、T抗原の発現を抑制することで間接的に宿主細胞のサイトカイン発現を抑制していることが明らかになった。
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