研究課題/領域番号 |
25460076
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
中山 祐治 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (10280918)
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研究分担者 |
齊藤 洋平 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (90411032)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Src / 細胞分裂 / チロシンリン酸化 |
研究概要 |
Src型チロシンキナーゼによる細胞分裂制御機構の解明を目指し,Srcシグナル経路の同定を行なっている。リン酸化プロテオミクス解析により細胞周期特異的なSrcシグナルを同定するため,平成25年度は細胞周期の同調方法を検討した。チミジンとノコダゾールを組み合わせた一般的な同調方法により細胞分裂前中期に同調が可能であるが,それ以降の各段階においても同調させるため,細胞周期同調方法について幾つか検討を行なった。Cdk1阻害剤であるRO-3306の処理によりG2期に停止させ,RO-3306除去後細胞周期を再開させた。その後,プロテアソーム阻害剤であるMG-132を添加し,一定時間処理後これを除去し,再び細胞周期を再開させた。その結果,RO-3306によりG2期停止した細胞は,RO-3306除去後細胞分裂を開始し,MG-132処理により細胞分裂中期に停止した。さらに,MG-132を除去すると染色体分配が開始し,分裂後期,終期へと進んだ。今後,浮遊細胞系での同調方法を検討したうえで,分裂期細胞のライセートを調製してタンパク質リン酸化プロテオミクス解析を行なう。 また,Src活性亢進による細胞分裂異常の機構についても,v-Srcにより活性化されるシグナル経路の同定を行なっている。平成25年度においては,v-Src発現細胞を分裂期に同調し,ライセートを調製してチロシンリン酸化プロテオミクス解析をおこなった。その結果,アクチン関連分子やシグナル分子など,数多くの分子のチロシンリン酸化を観察することができた。今後は,これらの中から,AuroraBの局在異常につながる機構の解明を目指す。 v-Src 発現によりAuroraBの局在異常が観察されるが,その機構を解明するため,生細胞においてAuroraBの局在変化を解析しようとしている。平成25年度にはHeLaS3を親株とするv-Src誘導発現細胞にGFP融合AuroraB遺伝子を導入し,発現細胞株を樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Src型チロシンキナーゼによる細胞分裂制御機構を解明するために,当初セリン/スレオニンリン酸化抗体を用いてSrcシグナルとセリン/スレオニンリン酸化シグナルのクロストークの検出を予定していたが,この方法では,タンパク質を同定することができない。よって,計画を一部変更し,チロシンリン酸化およびセリン/スレオニンリン酸化についてプロテオミクス解析を行なうことにした。平成25年度は,そのための条件検討に終始し,細胞分裂期前中期,中期,細胞質分裂の各段階の細胞を集める方法を構築した。さらには,細胞分裂後期および終期に同調する方法を検討し,今年度はリン酸化プロテオミクス解析を行なう予定。 また,Src活性亢進による細胞分裂異常については,リン酸化されている可能性のあるタンパク質を1個ずつ解析する予定ではあったが,v-Srcを用いたチロシンリン酸化プロテオミクスにより解析することに変更した。既にプロテオミクス解析を開始しており,解析の結果,多くのタンパク質のチロシンリン酸化を検出することができた。これらの中には,v-Srcの基質として知られていた分子も含まれていることから,プロテオミクス解析は妥当であったと考えられる。さらには,アクチン関連分子やシグナル分子なども含まれており,それらの中から,v-Srcによる細胞分裂異常の誘導に関与する分子を探索して行く予定。 さらには,Aurora Bの局在異常を誘導する機構の解明については,生細胞を用いたtime-lapse解析が有用と考えられる。平成25年度にGFP融合型のAurora Bを恒常的に発現するv-Src誘導発現細胞株を樹立したので,この細胞株を用いて詳細に局在異常について生細胞で解析する予定である。 以上より,平成25年度の達成度は概ね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
Src型チロシンキナーゼによる細胞分裂制御機構を解明するため,細胞周期を同調した細胞を用いてリン酸化プロテオミクス解析を行なう。Srcの基質リン酸化によるチロシンリン酸化に加えて,セリン/スレオニンリン酸化を定量的に解析することで,チロシンリン酸化シグナルとセリン/スレオニンリン酸化シグナルとのクロストークを解析することが可能と考えている。細胞周期の同調は,前中期,中期,後期/終期,細胞質分裂にわけて行なうことで,細胞分裂期の各段階特異的なリン酸化を見出すことが可能になる。プロテオミクス解析の結果見出されたチロシンリン酸化基質のうち,細胞分裂の各段階特異的にリン酸化されるタンパク質や,Srcの過剰発現や阻害により変動するセリン/スレオニンリン酸化に着目し,ノックダウンやリン酸化部位の同定と変異導入を行ない,細胞分裂制御における役割を解析する。 Src活性亢進による細胞分裂異常の誘導については,プロテオミクス解析により,細胞分裂期におけるSrc基質を既に数多く見出している。これらについて,v-Srcによりリン酸化されることで,実際に機能異常が引き起されるのかを変異導入などで解析する。また,v-Srcにより誘導されるAurora Bの局在異常については,GFP融合AuroraB恒常的発現株を用いてtime-lapse解析を行い,どのような分子の関与が予想されるか考察した上で,候補分子の関与を解析していく予定。
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次年度の研究費の使用計画 |
残額で購入可能な必要試薬が無かったため。 抗体などの消耗品にあてる。
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