H27年度: (1) Src型チロシンキナーゼである,Fynチロシンキナーゼによる細胞分裂制御の解析を行った。Src,Fyn,Yesを欠損したSYF細胞と,Fynを恒常的に発現させたSYF/Fyn細胞を比較し,FynによるEB1の局在促進,微小管伸長の促進,および微小管の安定化を見出した。さらに,HeLaS3細胞を用いた同調実験の結果,Fynが細胞分裂進行を亢進することがわかった。 (2) Srcシグナルによっても制御をうけるERKはスピンドル微小管上に局在し,Src阻害により一部不活性化され,Src過剰発現により活性化された。また,細胞分裂開始に伴い活性化した。time-lapse解析により,ERKの阻害は染色体整列を阻害した。 (3) 昨年度までのプロテオミクス解析において見出した新規のリン酸化ペプチドについて解析を進めた。 (4) Srcシグナルの破綻が細胞分裂にあたえる影響に関して,染色体分配異常を誘導するメカニズムの解明を行った。 研究機関全体を通じ本研究では,Srcシグナルによる細胞分裂制御機構の解明をめざし,Src型チロシンキナーゼによるスピンドル形成制御,Srcの下流シグナル分子による細胞分裂制御を明らかにした。また,細胞分裂後期に細胞周期を同調する方法を確立し,リン酸化プロテオミクスをおこない,多数の新規のリン酸化ペプチドを見出すことに成功した。これらの結果により,Srcシグナルによる細胞分裂制御機構の一端を明らかにしたと言える。また,多数のリン酸化ペプチドを見出したことから,本研究のさらなる発展が期待できる。また,Srcのキナーゼ活性の異常亢進型であるv-Srcを用い,異常な活性亢進が細胞分裂異常を引き起こすことを見出した。さらに,染色体分配異常であるchromosome bridge形成を見出し,さらにその原因としてDNA損傷の関与を見出した。
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