ダウン症 (DS) の精神遅滞や脳発達遅滞の分子メカニズムの解明を目的として,本研究ではDSモデルマウス由来脳組織を用いて種々の分子の発現や蓄積量を網羅的に比較した。タンパク質や遺伝子の発現解析や神経伝達物質の定量解析により,DSモデルマウス胎仔脳における抑制性神経の新生異常を示唆するタンパク質発現量の変動および炎症亢進を示唆するmRNA発現量の変動,さらに成体脳でのドパミン・セロトニン代謝亢進の可能性について明らかとした。また,胎仔脳での炎症亢進の原因は炎症細胞の流入と考えられ,その原因遺伝子を同定できた。これらの知見は,DS脳発達遅滞や精神遅滞の基盤となっている可能性が期待される。
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