近年、関節リウマチ、歯周病、癌の骨転移などによる炎症が、過度の骨吸収・骨破壊を引き起こし、骨粗鬆症のような病態をもたらすことが大きな社会問題になっている。しかしながら炎症が引き起こす骨破壊進行の詳細なメカニズムは依然として明らかになっておらず、高齢化社会が進む日本においてその病因究明は急務である。炎症によって引き起こされる骨破壊の詳細なメカニズムを明らかにすると共に炎症性骨破壊に対する治療法を開発することを目的として本研究に着手し、本年度はuPA/uPARによる炎症性破骨細胞分化制御機構を明らかにするために研究を行った。 炎症性の破骨細胞分化に重要な役割を果たしているTNF-αの産生におけるuPARの役割について解析し、uPAR欠損及びsiRNA法によってuPARの発現を減少させるとLPSが誘導するTNF-αの産生は顕著に抑制された。一方で、uPAR強発現細胞では、LPSが誘導するTNF-αの産生が増加した。加えて、2014年度の報告において、uPARの制御する破骨細胞の分化にintegrinが関与していることを示したが、uPAR が調節するLPS誘導性TNF-αの産生にもintegrinが関与していることを、中和抗体を用いて明らかにした。更に、uPAR中和抗体を用いて、uPARの機能を抑制するとLPS誘導性TNF-αの産生が抑制された。これらの結果より、uPARは、LPSが誘導するTNF-αの産生において重要な役割を果たし、炎症性の破骨細胞の分化を制御していることが明らかにされた。
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