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2014 年度 実施状況報告書

硫酸化糖鎖による炎症シグナルの調節とその破綻による炎症疾患発症に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 25460080
研究機関神戸薬科大学

研究代表者

灘中 里美  神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (60378578)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードプロテオグリカン / コンドロイチン硫酸 / 炎症
研究実績の概要

細胞表面や細胞外マトリクスに存在する硫酸化糖鎖が, 受容体を介して細胞内にシグナルを入力し, 細胞機能の制御に働く場合がある. この機能は, 硫酸化糖鎖の量・糖鎖長・硫酸化構造によって調節されるため, 硫酸化糖鎖の合成異常は細胞機能に影響を与え, 疾患の原因となり得る. 硫酸化糖鎖の合成異常を起こした遺伝子欠損マウスを解析した結果, 炎症性疾患の病態が重篤に現れ, この現象がマクロファージの過剰な応答に起因する可能性が示唆された. 本研究では, 硫酸化糖鎖の変化が, Toll-like受容体を経てサイトカインの産生を起こすマクロファージの炎症シグナル経路に与える影響を検討し, これに関連する“疾患糖鎖”を糖鎖構造・生合成の面から明らかにすることを目的としている.平成26年度は, 内因性の Danger Signal として Toll-like 受容体に認識されるプロテオグリカンの一つ, ビグリカン上の糖鎖に注目した. 定常状態において, 野生型マウスの肝臓に存在するビグリカンは硫酸化糖鎖による修飾を受けていないが, 炎症刺激を与えるとビグリカン上で硫酸化糖鎖の合成が起き, 回復に伴い硫酸化糖鎖修飾が抑制された. 興味深いことに, 炎症を誘導した時, 一過的な EXTL2 の発現低下に伴いビグリカン上の硫酸化糖鎖が合成された. また, EXTL2 ノックアウトマウスのビグリカンは, 定常状態でも硫酸化糖鎖による修飾を受けていた. この結果は, EXTL2 が Danger Signal として働く硫酸化糖鎖の合成を下方に制御することを示している. また, 野生型マウスの解析結果から, 炎症反応の過程で, 自然免疫を活性化させる硫酸化糖鎖の一過的な合成と回復に伴う合成停止を指示しているのが EXTL2 である可能性が示唆された. 本年度の結果は, 炎症を基盤とした疾患の発症に関わる「疾患関連糖鎖」の生合成制御機構を解明することができる可能性を示している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

EXTL2 による制御を受ける硫酸化糖鎖をもつ候補プロテオグリカンを明らかにすることができた. また, この候補プロテオグリカン上には正常では硫酸化糖鎖が付加しておらず, 炎症を誘導すると EXTL2 の発現低下に伴い硫酸化糖鎖の合成が開始される. 予想通り, EXTL2 により炎症反応に関連する糖鎖の合成が制御されていることが示唆できた. また, 硫酸化糖鎖によって活性化される炎症反応を阻害する化合物をアッセイする簡易な実験系を確立することもできた.

今後の研究の推進方策

EXTL2 により炎症反応に関連する糖鎖の合成が制御されていることが示唆できたため, 予定通り EXTL2 の発現調節機構を調べる. また, 平成26年度に確立したアッセイ系を用いて, 硫酸化糖鎖によって活性化される炎症反応を阻害する化合物をスクリーニングする.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] TFE3 Is a bHLH-ZIP-type Transcription Factor that Regulates the Mammalian Golgi Stress Response.2015

    • 著者名/発表者名
      Taniguchi M, Nadanaka S, Tanakura S, Sawaguchi S, Midori S, Kawai Y, Yamaguchi S, Shimada Y, Nakamura Y, Matsumura Y, Fujita N, Araki N, Yamamoto M, Oku M, Wakabayashi S, Kitagawa H, Yoshida H.
    • 雑誌名

      Cell Structural and Function

      巻: 40 ページ: 13-30

    • DOI

      doi: 10.1247/csf.14015.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] EXTL2 controls liver regeneration and aortic calcification through xylose kinase-dependent regulation of glycosaminoglycan biosynthesis2014

    • 著者名/発表者名
      Nadanaka S, Kitagawa H.
    • 雑誌名

      Matrix Biology

      巻: 35 ページ: 18-24

    • DOI

      doi: 10.1016/j.matbio.2013.10.010.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Heparan sulfate containing unsubstituted glucosamine residues: biosynthesis and heparanase-inhibitory activity.2014

    • 著者名/発表者名
      Nadanaka S, Purunomo E, Takeda N, Tamura J, Kitagawa H.
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 289 ページ: 15231-15243

    • DOI

      doi: 10.1074/jbc.M113.545343.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] ヘパラン硫酸の合成異常が神経発生と行動に与える影響についての解析2015

    • 著者名/発表者名
      池田 亜弥,○石野 敦重, 尾ノ井 孝一, 中村 侑, 灘中 里美, 北川 裕之
    • 学会等名
      第62回日本生化学会近畿支部
    • 発表場所
      立命館大学 びわこ・くさつキャンパス
    • 年月日
      2015-05-16 – 2015-05-16
  • [学会発表] Heparan Sulfate Containing Unsubstituted Glucosamine Residues: Biosynthesis and Heparanase Inhibitory Activity2014

    • 著者名/発表者名
      Satomi Nadanaka, Eko Purunomo, Naoko Takeda, Jun-ichi Tamura, and Hiroshi Kitagawa
    • 学会等名
      SFG JSCR Joint Meetin
    • 発表場所
      Hawaii
    • 年月日
      2014-11-16 – 2014-11-19
  • [学会発表] Dysregulated GAG Biosynthesis Affects Inhibitory Interneuron Proliferation During Neural Development and Causes Behavioral Disorders2014

    • 著者名/発表者名
      Satomi Nadanaka, and Hiroshi Kitagawa
    • 学会等名
      SFG JSCR Joint Meetin Sattelite II
    • 発表場所
      Hawaii
    • 年月日
      2014-11-16 – 2014-11-19
  • [学会発表] 遊離グルコサミン残基を含むヘパラン硫酸 ーその生合成機構とヘパラナーゼ阻害活性ー2014

    • 著者名/発表者名
      灘中里美、Eko Purunomo、武田尚子、田村純 一、北川 裕之
    • 学会等名
      第33回 日本糖質学会年会
    • 発表場所
      名古屋大学 豊田講堂
    • 年月日
      2014-08-10 – 2014-08-12
  • [図書] andbook of Glycosyltransferases and Related Genes, 2nd Ed (Taniguchi, N., Honke, K., Fukuda, M., Narimatsu, H., Yamaguchi, Y., and Angata, T., eds)2014

    • 著者名/発表者名
      Nadanaka, S., and Kitagawa, H.
    • 総ページ数
      849-861
    • 出版者
      Springer
  • [備考] 生化学研究室 教育・研究 神戸薬科大学

    • URL

      http://www.kobepharma-u.ac.jp/edrs/faculty_member_list/biochemistry.html

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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