研究課題
本研究では、我々が近年開発したIgE crosslinking-induced luciferase expression(EXiLE)法を土台にした、新しいアレルゲンエピトープの網羅的解析技術を開発することを目的に掲げる。EXiLE法は、ラット培養マスト細胞株に、ヒトの高親和性IgE受容体(FcεRI)遺伝子、および、転写因子NF-AT依存的ルシフェラーゼレポーター遺伝子を導入した細胞株である、RS-ATL8細胞を用いる。この細胞はヒトのFcεRIのほか、内在性のラットFcεRIを発現することから、FcεRI架橋を誘導できるとされるマウス抗卵白アルブミン(OVA)-IgEモノクローナル抗体(E-C1)と、誘導できないとされる抗OVA-IgE抗体(E-G5)を用いて、液相・固相中の抗原への応答性を比較した。最終年度は、これらのIgEの抗体のエピトープ解析に本手法が応用できるかどうかを調べた。その結果、E-C1については、既報にある通りOVA中の61~68番目のアミノ酸配列と強く反応したが、E-G5はやはり既報にある363~374番目のアミノ酸配列とは全く反応しないことが分かった。昨年度までの結果と合わせると、E-G5のエピトープは、おそらくOVAが二量体を形成したときにのみ存在する構造であり、上記配列はその構造に類似する可能性はあるものの、実際のエピトープとは異なることが考えられた。また、E-C1のエピトープペプチドへの反応性は、従来法では数百nMのペプチド濃度を必要としたが、本手法では、わずか数十pMで十分であった。このように、本研究は当初の目的をほぼ達成し、極めて微量のエピトープペプチドを検出することができることを示すことができた。今後、本手法を発展させることで、低アレルゲン化食品の開発や、より抗原性の少ないバイオロジクス医薬品の開発などへの貢献が期待される。
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