現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
sPLA2-IIIは長年不明であったマスト細胞の成熟を制御する中核分子であること、sPLA2-III依存的脂質ネットワークとして、脂肪酸代謝物であるプロスタグランジンD2(PGD2)―PGD2受容体DP1経路はマスト細胞成熟に関与する論文を発表した(Taketomi et al., Nat. Immunol., 2013; 本誌の表紙とハイライトに掲載)。本研究ではその後の展開として、①sPLA2-IIIの下流でPGD2以外にマスト細胞成熟を制御する脂質メディエーターは存在するのか、②sPLA2-IIIはマスト細胞以外の免疫細胞の機能にも関わるのか、③sPLA2-IIIはマスト細胞が関与する複合型疾患を制御するのか、の3点に着眼点をおき、PLA2を起点とした脂質ネットワークによる生命応答制御を総合的に理解するものである。その命題に対し、本年度は大きく以下の点を見出した。 ①sPLA2-IIIの下流で機能する脂質分子として新たにリゾリン脂質由来LPAを同定し、少なくともマスト細胞におけるLPA-LPA1経路はマスト細胞の成熟に関わる知見を得た。 ②sPLA2-IIIは好塩基球機能に関わり、アレルギーの促進に寄与する知見を得た。 ③従来、sPLA2はLDLの変性を通じて動脈硬化の悪玉因子として作用することが想定されてきたが、欠損マウスベースでそれが実証された例はなく、また、複数存在するsPLA2アイソザイムのうち、どのsPLA2が最も重要であるかについては混沌としていた。sPLA2-III欠損マウスにおいて動脈硬化が劇的に改善するという結果は、遺伝学的sPLA2研究史上初めてのことであり、これは本酵素が真の「atherogenic sPLA2」であることを意味する。 もって、本年度の成果は高く評価できるとともに、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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次年度の研究費の使用計画 |
支出費目の内訳として、物品費740,000円、旅費340,000円、人件費・謝金40,000円、その他480,000円を計上していたが、執行額は、物品費1,132,276円、旅費2,340円、人件費・謝金0円、その他133,523円であった。 本年度は、参加した学会の開催地の多くが所属機関の近接地である東京であったこと、これらの旅費を公費から賄ったこと、から旅費にかかる費用が低額であった。また、その他の費目として実験動物の輸送費を計上していたが、当該プロジェクトの他資金より賄う機会が多かったため、予定額の4分の1程度の支出となった。幾分物品費を多く購入したが、全体の執行率は79.2%となり、次年度に繰り越すこととなった。 次年度使用予定額は1,300,000円であり、費目の内訳を物品費520,000円、旅費340,000円、人件費・謝金40,000円、その他400,000円とする。次年度使用額331,861円は主に物品費に計上する。
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