研究課題
①sPLA2-Ⅲを起点としてLPA経路が肥満細胞成熟を促進する事を見出した。sPLA2-Ⅲは皮膚リン脂質PEを分解してLPAを動員した。LPA1受容体は肥満細胞と周縁局所環境に発現していた。肥満細胞成熟はLPA産生酵素或はLPA1受容体の阻害により不全を生じた。LPA1欠損マウスの肥満細胞は未成熟なため即時型アレルギー低応答性であった。以上より、sPLA2-Ⅲは細胞外PEを分解してLPAを動員し、このLPAが肥満細胞と局所環境のLPA1に受容され肥満細胞は成熟する事が示唆された。②sPLA2はリポ蛋白質リン脂質を分解して変性LDLを生成し、動脈硬化を促進する事が想定されてきたが、生体内で本過程を担う責任酵素は未同定であった。我々はsPLA2-Ⅲがこれに該当する事を見出した。本酵素は動脈硬化巣の血管内皮細胞と泡沫化マクロファージに局在していた。本酵素依存的に生じた変性LDLはマクロファージの泡沫化を促進した。LDL受容体欠損マウスが呈する動脈硬化巣は本酵素欠損により減少した。欠損群では血中LDLが増加した。マクロファージと非骨髄系細胞の酵素欠損により動脈硬化巣はそれぞれ減少した。LDL増加は非骨髄系の酵素欠損により再現された。本酵素はm-Calpain依存的に血管透過性を亢進させた。以上より、sPLA2-Ⅲはリポ蛋白質の分解変性によりマクロファージの泡沫化と血管内皮の透過性を制御することで動脈硬化を進展させる事が考えられた。③我々は大腸癌組織でのsPLA2-Ⅲ発現量と癌の悪性度が相関する事を報告した。ここではsPLA2-Ⅲの大腸疾患における役割を解析した。本酵素は大腸上皮細胞に発現していた。本酵素の欠損マウスでは前癌病変と大腸癌が改善した。更に、欠損群では大腸炎発症には影響なく持続的な炎症からの回復が向上するため病態が改善した。この時の欠損群の大腸組織では大腸炎促進性リゾリン脂質が減少した。よって、sPLA2-Ⅲは大腸組織の恒常性の制御を介して大腸の慢性炎症を促進するものと考えられた。
【受賞】東京都医学総合研究所発表会優秀賞「細胞外リン脂質代謝は皮膚バリア恒常性を制御する」2015年12月21日Bioactive Lipids in Cancer, Inflammation, and Related Diseases. ONO Travel Award「Skin abnormalities in group III sPLA2-deficient mice」2015年7月13日
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