研究課題/領域番号 |
25460088
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
中村 和昭 独立行政法人国立成育医療研究センター, 薬剤治療研究部, 室長 (80392356)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肝細胞培養系 / DNAメチル化 / 高機能培養肝細胞 |
研究実績の概要 |
本年度、ヒト肝癌由来細胞株であるHepG2細胞を用いて、DNAメチル化阻害剤ゼブラリンによるHepG2細胞におけるシトクロムP450(CYP)遺伝子発現亢進とその作用機序を検討した。培地へのゼブラリン添加は、HepG2細胞のCYP遺伝子発現を亢進させた。ゼブラリンはDNAメチル基転移酵素(DNMT)を抑制することから、ゼブラリンによるCYP遺伝子発現亢進とDNMT阻害との関連を検討した。HepG2細胞においてsiRNAを用いたDNMT1発現抑制によるCYP遺伝子発現変動を検討した結果、CYP遺伝子発現はゼブラリン添加時に比べ低かった。これまでの検討により、ゼブラリンがHepG2細胞においてdouble stranded RNA-dependent protein kinase(PKR)を抑制することを見出している。そこで、HepG2細胞においてsiRNAあるいは阻害剤を用いたPKRの抑制によるCYP遺伝子発現変動を検討した結果、CYP遺伝子発現はゼブラリン添加時に比べ低かった。一方、DNMT1とPKRを同時に抑制した場合、ゼブラリン添加時と同程度のCYP遺伝子発現亢進を認めた。これらの結果から、ゼブラリンはDNMT1およびPKRの両者を阻害することによって、CYP遺伝子発現を亢進していると考えられた。HepG2細胞は肝機能を有しているものの、その肝機能は著しく低いことが知られている。一方で、HepG2細胞は汎用性の高い培養細胞として多くの研究者に使用されている。したがって、ゼブラリンによるCYP発現亢進機序の解明は、HepG2細胞の機能亢進を誘導する新たな遺伝子発現制御機構の解明につながると考えられ、HepG2細胞の毒性研究等への応用に可能性が広がるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、初代肝細胞培養系における肝機能低下と三次元培養法による肝機能亢進の分子基盤を明らかにし、得られた知見から高度機能維持肝細胞/培養系を確立することを目的としているが、本年度においてはDNAメチル化阻害剤による肝機能亢進とその作用機序を明らかにし、これら知見を基に高度に機能を維持した培養肝細胞の樹立を進めていることから、研究目的の達成において、当初想定している成果が概ね得られている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究目的の達成のために、25年度において同定した転写因子の肝細胞への導入を行い、培養肝細胞において肝機能の亢進に寄与する転写因子をさらに同定するとともに、26年度に明らかにしたDNAメチル化阻害剤による新規肝機能亢進に関する知見を発展させ、高機能肝細胞の樹立を試みる。また、引き続き三次元培養において肝機能の亢進を惹起する細胞間コミュニケーションの分子実体を明らかにすべく、肝機能を制御する細胞表面シグナル伝達分子の同定を行う。これらの成果を肝細胞特異的機能発現機構の統合的理解と高度機能維持肝細胞/培養系の構築につなげていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね当初計画通りであったが、物品費において当初計画の予算の執行を下回ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の使用計画に沿った執行を行うことにより、さらなる研究促進と適正な研究費執行が可能であると考えられる
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