研究課題
基盤研究(C)
統合失調症の約30%は妊娠中の母親のウイルス感染に関連があると報告されているが、周産期ウイルス感染による胎児の脳神経発達障害の分子機構は不明である。我々は、polyI:Cを用いた周産期擬似ウイルス感染モデルマウスの脳機能障害の分子機構を培養細胞系で解析している。これまでに、polyI:Cはアストロサイトに作用し、アストロサイト-神経細胞間の相互作用に異常が生じること、アストロサイトで誘導されるインターフェロン誘導性膜タンパク質(IFITM3)は神経発達障害に関与する重要な神経発達障害関連分子であることを見出した。本研究では、IFITM3の下流でアストロサイトから分泌されるfollistatin like-1 (Fstl1)の病態生理学的意義について明らかにするとともに、新規治療標的の可能性について検討する。本年度はFstl1の分泌に関与するPolyI:Cの標的細胞がアストロサイトであるかどうかを調べるため、polyI:C処置後のFstl1の細胞外量をアストロサイトとマイクログリア細胞で調べた。その結果、polyI:Cを処置したアストロサイトではFstl1の細胞外量が著しく増加したが、マイクログリアでは有意な変化は認められなかった。また、Fstl1結合タンパクの探索を行い、細胞骨格系やGタンパク質をプロテオミクス解析によって同定した。これまでの検討によって、アストロサイトにpolyI:Cを処置するとIFITM3の発現が増加し、IFITM3の下流でFstl1の分泌が亢進することを見いだしており、Fstl1と神経発達障害の関連を示唆する知見を得ていることから、免疫染色法によりIfitm3とFstl1の細胞内局在を調べた。polyI:Cを処置したアストロサイトにおいてFstl1が細胞内で繊維状の構造を示し、Ifitm3とFstl1の共局在が認められた。
2: おおむね順調に進展している
本年度に計画していたFstl1の分泌に関与するPolyI:Cの標的細胞の同定、Fstl1結合タンパクの探索およびIfitm3とFstl1の関連解析は完了しており、目標はほぼ達成できたと考えられる。
今後はFstl1による神経発達障害の機序の解明として初代培養神経細胞にリコンビナントFstl1を添加して培養を行い、樹状突起マーカー分子Microtubule-associated protein 2 (MAP2) および軸索マーカー分子Tau1の免疫染色によって神経突起伸展が抑制されるのかを調べる。また、神経伝達に重要なスパイン形成については、EGFPを遺伝子導入してスパインを可視化し、スパインの形状および密度を計測する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Brain Behav. Immun.
巻: 38 ページ: 272-282
10.1016/j.bbi.2014.02.014.
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/pharmacy/02/outline.html