研究課題
抗うつ薬の第一選択として用いられるSSRI(セロトニン選択的再取り込み阻害薬)はシナプス間隙のセロトニン濃度上昇を引き起こすことはよく知られているが、その後のセロトニンシグナルについては未だ不明な点が多い。本研究では、Gs共役型のセロトニン4型受容体(5-HT4受容体)に着目し、抗うつ治療時における本受容体の役割と意義を明らかにすることを目的としている。平成27年度は、最初にSSRI以外の抗うつ治療(電気けいれん刺激)による神経新生作用について5-HT4受容体の寄与を検討した。5-HT4受容体欠損マウスに電気けいれん刺激を与え、その海馬歯状回での細胞増殖を検討したところ、野生型・当該受容体欠損マウスで同程度の増殖亢進が認められた。したがって、電気けいれん刺激による神経新生には5-HT4受容体シグナルは関与しないものと考えられた。次に5-HT4受容体の発現細胞について、その発現細胞の同定を検討した。5-HT4受容体欠損部位に発現しているガラクトシダーゼタンパクを指標に幼若神経マーカー(ダブルコルチン)、成熟マーカー(カルビンジン)と染色したところ、5-HT4受容体の発現細胞は主として成熟神経細胞であることが明らかになった。これらの結果から、SSRIによる海馬神経新生と成熟神経の若返りには、まず成熟神経の5-HT4受容体を介する若返りシグナルが重要であることを示唆した。さらに抗うつ治療による神経分化・成熟過程の影響についても検討を行った。その結果、抗うつ治療により、幼若神経から未成熟神経に進む過程が促進していることを明らかにした。このことは、抗うつ治療による神経新生は、細胞増殖促進のみならず、神経成熟の過程にも促進効果をもたらしていることを示唆している。
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Mol Brain
巻: 8:29 ページ: -
10.1186/s13041-015-0120-3
http://www.rs.noda.tus.ac.jp/~biost/labo/segi.html