研究課題
腫瘍微小環境は、腫瘍を構成している細胞の種類や割合、構造から生じる低酸素などの物理的ストレス、環境によって誘導される細胞の遺伝子発現変化など、さまざまな要因が組み合わさったバランスの上に成り立っている。本研究では、腫瘍内のがん細胞、間質細胞の種類や性質およびストレス領域の局在の変化が腫瘍の増殖とどのように連動しているのかを明らかにすることを目的とし、C57BL/6マウスに肺がん由来3LL細胞を皮下移植した腫瘍モデルを用いて増殖する腫瘍細胞の経時的な変化と低酸素領域の局在を明らかにしてきた。また、これまでに構築した数理モデルは、腫瘍におけるがん細胞の増殖と血管新生の数値シミュレーションにより、血管誘導因子の分布、低酸素領域の分布およびがん細胞の壊死の発生を再現することができている。今年度は、マクロファージ、好中球や血管内皮細胞などの腫瘍浸潤細胞について血管新生および腫瘍増殖への影響を明らかにするため、腫瘍から各々の細胞を分取し遺伝子発現を解析した。低酸素プローブ陽性のがん細胞の割合は腫瘍の成長に伴って増加し、3~10%のがん細胞で低酸素応答や小胞体ストレス応答などのストレス応答に関わるシグナル伝達経路の活性化が見られる。マクロファージでは低酸素プローブ陽性の細胞が1~4%検出され、一部の細胞でVEGF, IL-10など腫瘍関連マクロファージのマーカー遺伝子の発現が認められた。個々の細胞を比べるとマクロファージの遺伝子発現はがん細胞に比べてゆらぎが大きく不均一であることが示された。また、低酸素プローブ陰性マクロファージにも小胞体ストレス応答が活性化している細胞があり、ストレス感受性の違いや低酸素以外の誘導因子が関与している可能性が示唆された。
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http://www.nl.mse.kyutech.ac.jp/07_cancer.htm