研究課題
本研究課題は、シナプス病態を反映するPACAP欠損マウスやイメージングシステムを用いてスパインの動態や機能制御する機構に着目し、スパイン上でのPACAPシグナルやセロトニン (5-HT) 受容体との相互作用の役割を解析し、精神疾患発症・病態の分子基盤の理解や新規創薬ターゲットとしての有用性を探ることを目的とする。26年度は、研究実施計画に基づき主に以下の成果を得た。A)PACAPシグナルによる各GPCRの細胞内移行の解析これまでにPACAPにより5-HT2A受容体 (5-HT2AR)が細胞内移行を示すことを明らかにしている。統合失調症などの精神疾患と関連し、5-HT2ARと結合するグルタミン酸2受容体 (mGluR2) やドパミン2受容体 (D2R) においても、PACAPにより直接的な細胞内移行が引き起こされるかをHEK293T細胞を用いて検討した。その結果、mGluR2やD2Rは、PACAPにより直接的な動態制御を受けず、本作用は、5-HT2AR選択的であることが明らかになった。しかし、初代皮質神経培養細胞を用いた検討より、内在的なmGluR2は神経細胞膜上の発現量が減少する傾向が認めれらた。このことは、mGluR2はPACAPから直接的な影響は受けないものの、5-HT2ARと結合することにより細胞内移行し、5-HT2Aと共にPACAPにより機能制御を受ける可能性を示すものである。B)PACAPシグナルによるスパイン形成および成熟への関与これまでにPACAPにより成熟スパイン数が増加することを見出している。今回、PACAPによりスパインが新たに形成・成熟することを明らかにした。また、このスパイン形成には、miR-132が関与し、このmiR132をトラップする配列を付加した遺伝子を導入した場合、スパイン数が増加しないことを見出した。
2: おおむね順調に進展している
PACAPシグナルによるGPCRの細胞膜上からの細胞内移行について、5-HT受容体だけでなく、精神疾患に関わるD2RやmGluR2の関わりについても解析することが出来た。また、より生体内に近い初代培養神経細胞を用いた検討ができるようになったため、おおむね順調に進展していると考えられる。さらに、スパインに関しては解析ソフトを購入し、スパインに特化した解析用マクロを作成したことにより、スパインの数だけでなく長さや体積までを解析することが出来るようになった。これにより、PACAPによるスパインの成熟への影響をこれまで以上に詳細に検討することが可能になった。PACAPシグナル経路の解析が進んだことにより、miR-132発現遺伝子やmiR-132を結合する配列を付加した遺伝子のウイルスを作成し、その影響を観察するなど進展が見られる。
A)PACAPシグナルによる各GPCRの細胞内移行の解析カルシウム指示薬などを用いて、PACAPによる5-HT2ARの機能評価をおこなう。さらには樹状突起スパインなどの局所においても5-HT2ARの動態の解析やシグナルのイメージングをおこなう。また、5-HT2ARだけでなく、精神疾患との関連が深いD2RやmGluR2においても、初代培養神経細胞上での動態を観察する。B)PACAPシグナルによるスパイン形成および成熟への関与PACAP遺伝子欠損マウスの海馬において、miR132の発現をin situ hybridazationを用いて解析を行う。また、miR132をマウス脳へ導入した際の行動解析や、スパイン形態変化の解析を行うことで、PACAP遺伝子欠損マウスの精神行動異常の原因のメカニズム解明に迫る。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (6件)
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