研究実績の概要 |
肥満は糖尿病、高血圧、高脂血症といった生活習慣病の主要な危険因子であり、従って、肥満の発症機構を明らかにすることは、これらの疾患群の予防もしくは治療に貢献できると考えられる。肥満の形成機構の一つの原因として、レプチン抵抗性の関与が示唆されている。私たちは、現在までの研究の結果、レプチン抵抗性の形成に小胞体ストレスが関わっている可能性を見出している(Molecular Pharmacology 2008, 74:1610-19)。しかしながら、小胞体ストレスがどのようなメカニズムでレプチン抵抗性を誘発しているかについては未だ不明な点が多く残されている。一方、興味深いことにプロテインキナーゼC(PKC)がインスリン抵抗性による糖尿病発症に関わる分子であることが報告された。PKCは免疫機能の活性化に関与し、免疫機能の変化は肥満や糖尿病の発症に関わる。そこで本研究では、PKCが小胞体ストレス応答シグナルに関与している可能性を明らかにし、免疫応答と小胞体ストレスのクロストークの実態を解明し、糖尿病、肥満発症機構を解明することを目的とした。検討の結果、PKCの活性化は、小胞体ストレス関連タンパク質の誘導を惹起し、小胞体ストレスセンサータンパク質の機能に影響することが明らかになった。従って、PKCは小胞体ストレスによるレプチン抵抗性の形成に関わる因子である可能性も考えられ、現在その可能性を検討している。
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