研究課題/領域番号 |
25460102
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
首藤 剛 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (80333524)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | マイクロアレイ / 遺伝子 / 閉塞性肺疾患 / 慢性炎症 / 粘液貯留 |
研究概要 |
閉塞性肺疾患は,慢性気道炎症や過剰な粘液貯留,およびこれらの症状に伴う気道閉塞を主徴とする難治性の呼吸器疾患の総称である.本研究では,本申請者が,近年,独自に確立した慢性気道炎症と粘液貯留を安定的に呈するモデルマウス (低致死率βENaC-Tgマウス) を用い,閉塞性肺疾患における治療標的または診断マーカー分子を探索し,疾患に対する新たな画期的治療薬の開発を推進することを究極の目的とする.特に今年度は,βENaC-Tgマウスの網羅的発現差異解析および創薬標的または診断マーカー候補分子の検証実験を実施した.その結果,Microarray解析 (3D-Gene,mouse oligo chip 24k,TORAY) により,βENaC-Tgマウスの肺組織においてmRNAレベルで発現変化する遺伝子の網羅的探索を行い,検出遺伝子23,474遺伝子の中で,125遺伝子がβENaC-Tgマウスにおいて200 %以上増加し,34遺伝子が50%以下に減少していることが明らかとなり,この中には,複数の興味深い病態変動遺伝子が存在することを確認した.また,Gene Ontology (GO) 解析より,細胞外や細胞膜上に分布する遺伝子・ケモカインやサイトカインの活性・結合に関与する遺伝子・細胞の遊走や免疫応答に関与する遺伝子の発現が増加していることが明らかとなった.さらに,pathway解析の結果より,βENaC-Tgマウスの肺組織においては,プロテアーゼ活性,酸化ストレス,炎症応答に関与するpathwayが強く活性化されていることが明らかになった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,βENaC-Tgマウスの網羅的発現差異解析を主目的として研究を行った.βENaC-Tgマウスが,安定した粘液貯留および肺気腫を呈するマウスであることが証明された.まず,Microarray解析 (3D-Gene,mouse oligo chip 24k,TORAY) により,βENaC-Tgマウスの肺組織においてmRNAレベルで発現変化する遺伝子の網羅的探索を行い,検出遺伝子23,474遺伝子の中で,125遺伝子がβENaC-Tgマウスにおいて200 %以上増加し,34遺伝子が50%以下に減少していることが明らかとなり,この中には,複数の興味深い病態変動遺伝子が存在することを確認した.また,Gene Ontology (GO) 解析より,細胞外や細胞膜上に分布する遺伝子・ケモカインやサイトカインの活性・結合に関与する遺伝子・細胞の遊走や免疫応答に関与する遺伝子の発現が増加していることが明らかとなった.さらに,pathway解析の結果より,βENaC-Tgマウスの肺組織においては,プロテアーゼ活性,酸化ストレス,炎症応答に関与するpathwayが強く活性化されていることが明らかになった.なお,本年度は,更なる解析を実施する予定であったが,病態動物の供給が追いつかず,次年度への繰り越しをすることとした.
|
今後の研究の推進方策 |
網羅的発現解析の結果より,プロテアーゼ活性,酸化ストレス,炎症応答に関与するpathwayが,βENaC-Tgマウスの病態の特徴であることが明らかになった.そこで,今後は,これらのpathwayを標的とした化合物の病態改善効果または遺伝子改変マウスとの掛け合わせによる病態改善効果について検討を深めていく必要がある.
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,βENaC-Tgマウスの供給が実験予定に間に合わず,想定通りの実験が一部こなせなかった.来年度は,本年度実施予定であった実験を含めてβENaC-Tgマウスの閉塞性肺疾患病態に対する既存薬の作用に関する検討を実施する予定である. 本研究で実施する実験は,動物実験・細胞実験を主体とする.期間全体を通じて,動物の繁殖維持に費用を要するが,後半に特に動物実験を行う予定である.また動物実験の表現型解析に用いる,Western BlottingやELISA,定量的RT-PCR kitも計上した.また,H26年度は,網羅的解析を基盤に見出した標的分子の機能的解析を実施することから,細胞実験やsiRNA実験に要する消耗品を計上した.H26年度以降には,薬物投与実験を見据え,各種化合物にあてる予算を計上した.
|