研究課題
閉塞性肺疾患は,慢性気道炎症や過剰な粘液貯留,およびこれらの症状に伴う気道閉塞を主徴とする難治性の呼吸器疾患の総称である.慢性気管支炎や肺気腫を主徴とする慢性閉塞性肺疾患 (COPD),粘液の貯留や慢性細菌感染が認められる難治性遺伝性疾患の嚢胞性線維症 (CF) などの疾患が,これにあたる.演者らは,2004年にMallらにより作成された気道特異的上皮型Na+チャネル (ENaC) 過剰発現マウス (βENaC-Tgマウス) の致死率を改善し,粘液貯留・肺気腫・呼吸機能障害を安定的に呈する閉塞性肺疾患モデルマウスを確立した (C57BL/6-βENaC-Tg マウス).そこで,演者らは,本マウスの肺組織において,プロテアーゼおよび酸化ストレスが活性化されている点に着目し,これらの経路の活性化が病態形成に寄与するか否か,また,その阻害が病態を改善するか否かについて検討した.まず,既存のプロテアーゼ阻害薬であるメシル酸カモスタット (100 mg/kg,1日2回,3週間,p.o.) およびその誘導体であるONO-3403 (20および100 mg/kg,1日2回,2週間,p.o.) の効果について検討した.その結果,メシル酸カモスタットによりマウスの肺気腫・呼吸機能低下症状の改善傾向が認められ,ONO-3403により有意な改善を示した.次に,抗酸化薬であるN-アセチルシステイン (NAC) (0.01, 0.1 mg/kg,1日1回, 2週間, i.t.) を投与したところ,NAC投与は,マウスの肺気腫ならびに呼吸機能障害に対して,用量依存的に有意かつ顕著な改善効果を示した.以上,我々は,C57BL/6-βENaC-Tgマウスにおいて,プロテアーゼおよび酸化ストレスの活性が病態を増悪することを明らかにし,本経路の阻害が,病態改善に寄与することを示し,本マウスが,薬効評価に耐えうる新規閉塞性肺疾患モデルマウスとなることを明らかにした.
2: おおむね順調に進展している
本年度は、網羅的解析に基づいた化合物アプローチを中心に実験を行った。マイクロアレイ解析で明らかになったプロテアーゼ・酸化ストレス経路を抑制する既存薬による効果を試し、良好な結果を得たと思う。来年度は、当初予定通り、本マウスに対する遺伝子背景の変化や様々な刺激による肺病態への影響についてさらに検討する予定である。
まず,酸化ストレスの亢進が引き起こされている観点から,内因性ビタミンCを体内で産生できないC57BL/6-βENaC-Tgマウスを作製し,その肺病態について検討する予定である。また、内因性の抗酸化物質、尿酸による影響についても検討していく予定である。さらに、タバコスモークや高脂肪食などの外因性の刺激が肺病態に与える影響についても検討していく予定である。
本年度は概ね実験は良好に進んだが、一部取り組めなかった実験(遺伝子改変動物の餌代など)があるため,繰り越しになった。
新たに導入する遺伝子改変動物を維持するのに必要な餌を購入するために使用する予定である。
遺伝子機能応用学研究室http://molmed730.org/index.html
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Jpn J Clin Pharmacol Ther
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J Biol Chem.
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10.1074/jbc.M113.532093jbc.M113.532093.