研究課題/領域番号 |
25460103
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
原 英彰 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (20381717)
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研究分担者 |
鶴間 一寛 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (50524980)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | GPNMB / SOD1G93A / 膜タンパク質ライブラリ / Na+,K+-ATPase / 記憶 |
研究概要 |
申請者らは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症により変動する因子としてGPNMBを同定し、その神経保護因子としての可能性を世界に先駆けて提唱した。申請者らの過去の検討結果において、GPNMB細胞外断片の処置により神経細胞死保護作用および記憶保持能力の上昇が認められたことから、細胞膜に存在する何らかの膜受容体に結合することで、様々な作用を示すのではないかという仮説を立てた。そこで、本研究ではGPNMBの受容体を同定し、病態下におけるGPNMBの機能を解明することで、神経難病であるALSや癌に代表されるGPNMB関連疾患の克服に貢献することを目的として実施した。すなわち、(1) GPNMB受容体の同定、(2) 同定された受容体及びGPNMB間の親和性の検討、並びにその下流シグナルの追跡及び治療目的としての可能性の探索、(3) GPNMBを高発現させたマウスを用いて、記憶に代表される脳高次機能および関連因子がどのような影響を受けるかについての検討の3点について検討を行った。 上述した3項目の研究成果について以下に述べる。(1)Na+, K+-ATPaseおよびVoltage-dependent anion-selective channel protein 1(VDAC1) がGPNMB細胞外ドメインをリガンドとすることが分かった。(2)GPNMB細胞外ドメインとNa+, K+-ATPaseの結合を免疫沈降法により評価したところ、生体内においてGPNMB細胞外ドメインとNa+, K+-ATPase α1およびα3と結合することが分かった。(3)GPNMB過剰発現マウスにおいて海馬依存的な記憶の増強がみられた。 以上より、(1)GPNMB受容体の同定に関する検討については既に終了しており、現在は(2)および(3)のさらなる検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題において、検討項目にあげた3項目の進行状況を以下に述べる。(1) GPNMB受容体の同定に関して、マウスの全脳から膜タンパク質ライブラリを大量に調製し、固定化リガンドに結合させて固定化リガンド結合膜タンパク質ライブラリを精製した。その後、BLOTCHIPディファレンシャル解析により標的受容体の探索およびLC-ESI-MS /MS解析により受容体の同定を行ったところ、Na+, K+-ATPaseおよびVoltage-dependent anion-selective channel protein 1(VDAC1) がGPNMB細胞外ドメインをリガンドとすることが分かった。(2) (1)で同定されたNa+,K+-ATPaseに対するGPNMB細胞外ドメインの親和性の検討を運動ニュ―ロンNSC-34細胞を用いて免疫沈降法により行った。Anti-Na+,K+-ATPase α1抗体およびAnti-Na+,K+-ATPase α3抗体により免疫沈降を行った後、ウエスタンブロット法によりGPNMBタンパク質の発現を検出したところ、GPNMB細胞外ドメインのシグナルが検出された。したがって生体内においてGPNMB細胞外ドメインはNa+,K+-ATPase α1およびα3と結合することが分かった。現在、GPNMB細胞外ドメインによる神経保護作用がNa+,K+-ATPaseを介しているか否かについての検討を進めている。(3) GPNMB過剰発現(TG)マウスにおける、GPNMBの脳高次機能に対する役割の解明についての検討では、慨日リズム、うつ・不安および記憶の評価を行った。慨日リズムおよび鬱・不安の評価において、TGマウスは野生型(WT)マウスと比較して差がなかった。一方、記憶の評価において、TGマウスはWTマウスと比較して海馬依存的な記憶の増強がみられた。現在、脳内における記憶に関連する因子の発現量の変化の検討を進めている。 以上、本研究課題は予定通り順調に進んでおり、着実に研究成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
研究概要において検討項目にあげた3項目について下記の通り継続して研究を進める。 (1)GPNMBをリガンドとするチャネルやポンプの同定は既に終了しており、今後は同定したチャネルやポンプに対するGPNMBの親和性の検討、並びにその下流シグナルの追跡及び治療目的としての可能性の探索について研究を進める。 (2)GPNMB細胞外フラグメントの神経細胞死保護作用がNa+,K+-ATPaseを介しているか否かについて検討を進める。 (3)GPNMB過剰発現マウスにおいて、脳内の記憶に関連する各種因の子発現量の変化の検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、実験が順調に進展し、予想以上に早く結果を見出すことができたために、次年度に使用する予定の研究費が生じた。 次年度はGPNMBペプチド、siRNA、抗Na+,K+-atpasek抗体、抗GPNMB抗体および細胞培養に必要な消耗品等に使用する。また、学会での発表や論文投稿も予定しているため、これらに必要な旅費や論文投稿料にも使用する予定である。
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