研究課題
門脈圧亢進症は門脈圧が上昇する疾患群の総称であるが、肝硬変の合併症として発症する場合が大部分を占めている。門脈圧亢進症が進行すると食道静脈瘤、脾腫、腹水などの症状を呈する。門脈圧亢進症には、未だ根本的な予防法・治療法が確立されておらず、対症療法による治療が主である。また、門脈圧亢進症の病態の進行メカニズムについては未だ知見に乏しい。本研究では、門脈圧亢進症モデルマウスの門脈を用いて、病態時の門脈平滑筋機能変化の分子基盤の解明を目指した。胆汁性の肝硬変を起こす胆管結紮モデル(BDL)マウスを使用した。リアルタイムPCR法によりBDL群の門脈平滑筋では、Ca2+活性化Cl-チャネル分子であるTMEM16AのmRNA発現量がSham群と比較して減少していた。免疫細胞化学法によりTMEM16Aがタンパク質レベルでも減少していた。ホールセルパッチクランプ法においてCa2+活性化Cl-チャネルの電流密度がBDL群から単離した門脈平滑筋細胞において有意に減少していた。これらの結果より、BDL群門脈ではTMEM16Aの機能発現が低下している可能性が示唆された。さらに収縮実験において、両群ともに自発収縮が観察されたが、BDL群ではSham群と比較し収縮力減少と、収縮頻度増加の傾向が明らかとなった。以上より、門脈圧亢進症では門脈平滑筋細胞におけるTMEM16Aの発現および機能が低下した結果、自発収縮の発生機序に変化の生じた可能性が示唆された。平滑筋においてCa2+活性化Cl-チャネル活性が減弱すると細胞膜が過分極し、細胞の興奮性が低下することが知られているため、TMEM16Aの機能発現低下は門脈圧の上昇に対し抑制的に働いていると考えられる。本研究で得られた知見が門脈圧亢進症の病態進行の機序解明に役立つことが期待される。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、門脈圧亢進症モデル動物として、胆管結紮(BDL)マウスを作製し、Ca2+活性化Cl-チャネル分子であるTMEM16Aの発現および機能低下を見いだすことができた。Ca2+活性化Cl-チャネルTMEM16Aが、病態機構に関与していることを示唆する結果である。
門脈圧亢進症において、Ca2+活性化Cl-チャネルであるTMEM16Aの発現が低下したことに着目し、TMEM16A分子の発現調節機構の解明を目指す。また、肝硬変を伴わない門脈圧亢進症のモデルとして用いられている門脈部分結紮(PPVL)マウスを作製し、BDLマウスと比較解析する。
本年度は、学会旅費の大部分を大学経費等により負担し、科研費より執行しなかったため、相当分が残額となった。
次年度は、学会旅費も科研費より執行する予定である。また、次年度は、モデル動物作製のため、動物購入費用が当初の計画より大幅に増加する予定である。
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