研究課題/領域番号 |
25460105
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
三部 篤 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (30425706)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心筋症 / アポトーシス / 熱ショックストレスタンパク質 / ミトコンドリア |
研究概要 |
低分子ストレスタンパク質(HSP)の遺伝子変異(点変異、欠損変異など)は、筋原線維性ミオパシーなどの神経筋疾患の原因である。しかし、低分子HSP変異を原因とするそれぞれの疾患の詳細な病態発症機序は明らかではない。我々は、低分子HSP異常により発症する疾患の病態解明とその治療法の開発を目的として、心筋特異的α-Bクリスタリン(CryAB)点変異体(120番目アルギニン→グリシン)トランスジェニック(TG)マウスを作製した。このマウスでは、心機能の低下および心肥大などの心筋症症状を示す。低分子HSPの変異体を発現しているマウス心筋では、細胞内にアグレゾーム(細胞核周辺に集積した凝集体)を形成した。また、このマウス心筋では、アグレゾームの蓄積に伴ってミトコンドリア機能障害が起こり、これら変化に伴ってアポトーシスと思われるTUNEL陽性心筋細胞死が起こっていた。ミトコンドリアは、ミトコンドリア内Ca2+濃度の上昇やミトコンドリア膜電位の脱分極などによって誘発されるmitochondrial permeability transition pore (mPTP)の開口を介して、ネクローシスやアポトーシスなどの細胞死に関与することが知られている。そこで、このmPTPの状況を確認するため、低分子HSPの変異体を発現しているマウス心筋で、心筋症症状が発生する前の心筋ミトコンドリアのmPTP開口感受性を検討した。その結果、低分子HSPの変異体を発現している心筋から単離したミトコンドリアでは、mPTPの開口感受性が上昇していた。そして、mPTPの開口感受性が上昇に伴ってアポトーシスと思われるTUNEL陽性心筋細胞死が起こっていた。このmPTPの開口感受性が心筋アポトーシスの発生を誘発している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、我々は、点変異低分子ストレスタンパク質を原因とする筋原線維性ミオパシーのミトコンドリア障害の機序を検討している。このモデルマウスでは、心筋ミトコンドリアの変化に伴ってアポトーシスと思われるTUNEL陽性心筋細胞死が起こっていた。また、ミトコンドリアでは、mitochondrial permeability transition pore (mPTP)の開口感受性が上昇していた。すなわち、点変異低分子ストレスタンパク質を原因とするmPTPの開口感受性の上昇が、心筋ミトコンドリア障害を引き起こすことが示された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、心筋mitochondrial permeability transition pore (mPTP)の開口感受性の上昇を抑制する薬物を探索する予定である。
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