これまでの研究において,Traf3ip2/Act1遺伝子欠損マウスは,Thサブセット関連分子(転写因子)の解析から,Th17関連分子(IL-17,STAT3およびRORγt)の発現がいずれも有意に亢進していることを突き止めた.さらに乾癬との関連が指摘されているIL-22およびIL-24 mRNAの発現も有意に亢進していることを明らかにした.これらの実験成績は、Traf3ip2/Act1遺伝子欠損マウスで認められる掻痒や皮膚の肥厚,表皮角化細胞の過増殖が,アトピー性皮膚炎ではなく,乾癬の病態に類似することを極めて強く示唆するものであった.また,Traf3ip2/Act1遺伝子欠損マウスを用いた薬効薬理試験の結果からは,掻痒行動にはH1受容体,オピオイドミューならびにカッパ受容体が関与していることが判明した.平成27年度はTraf3ip2/Act1遺伝子欠損マウスの掻痒行動を指標として、Jak-STAT経路の阻害薬であるトファシチニブの効果について検討した.その結果,トファシチニブはTraf3ip2/Act1遺伝子欠損マウスの掻痒行動を用量依存的かつ有意に抑制することが明らかとなった. 以上の成績から,Traf3ip2/Act1遺伝子欠損マウスは乾癬様の病態モデルマウスとして有用であると考えられた.また,近年になって関節リウマチの治療薬として開発されたJak-STAT経路の阻害薬であるトファシチニブが,乾癬の治療薬として奏功する可能性が高いことを示唆する結果も得ることが出来た.
|