研究課題
本研究の目的は、アレルギー性疾患、炎症性疾患の発症や癌悪性化における酸感受性カリウムチャネルK2P5.1の病態生理学的役割を明らかにすることである。本研究では、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)モデルマウスを用いて、K2P5.1阻害により大腸炎症が抑制され、下痢、血便などの病態が改善することを見出した。炎症性腸疾患における炎症性サイトカイン産生の増加には、CD4陽性T細胞におけるK2P5.1の発現・活性亢進が関与していた。また、ヒト脾臓よりK2P5.1の機能不全型スプライスバリアント(K2P5.1B)を単離した。ヒト白血病細胞株K562にK2P5.1Bを過剰発現させると、K2P5.1活性が阻害され、細胞増殖能が抑制された。さらに、スプライシング阻害剤の投与によりK2P5.1B発現が亢進し、K2P5.1活性が減少することも明らかにした。これらの結果は、炎症性腸疾患において、直接的、間接的K2P5.1阻害剤が有効であることを示唆した。一方、K2P5.1の相互作用分子CD81は様々な細胞種に機能発現しており、最近、癌増殖、転移に重要な役割を果たしていることが明らかにされつつある。本研究では、CD81のノックダウンによりK2P5.1活性が抑制されることを見出した。K2P5.1及びCD81は予後不良なトリプルネガティブ乳癌細胞株に発現しており、CD81のノックダウンにより細胞増殖能が抑制された。これらの結果は、K2P5.1及びCD81が乳癌治療薬の新規創薬標的となることを示唆した。CD81は、自己免疫疾患、炎症性疾患の創薬標的としても期待されており、CD81抑制による抗炎症効果にK2P5.1の活性調節が関与している可能性がある。
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