研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、アレルギー性気管支喘息発症におけるセマフォリンの役割について、マウス実験的アレルギー性気管支喘息モデルを用いたin vivo実験により明らかにすることである。平成25年度はセマフォリン4Aおよび4Dの役割について検討する予定であったが、これらの抗体より先にセマフォリン3Aおよび7Aに関する抗体が入手可能であったため、セマフォリン3Aおよび7Aの2つに関して実験を開始した。抗原特異的IgE mAbで感作したマウスに繰り返し抗原を気管内に直接7回投与することによりマウス喘息モデルを作成した。セマフォリン7Aに対する中和抗体を抗原惹起4~7回に気管内に直接投与すると、7回抗原惹起後24時間の気管支肺胞洗浄液中の好中球ならびに好酸球浸潤が有意に抑制された。また、セマフォリン3Aの受容体であるneuuropilin-1に対する中和抗体を投与すると好中球および好酸球浸潤に対しては抑制傾向を示した。さらに、IL-33およびIL-17Aの併用投与により誘導される好中球浸潤をセマフォリン7Aに対する中和抗体は抑制を示した。これらの結果より、セマフォリン7Aは好中球ならびに好酸球浸潤を介してアレルギー性気管支喘息の発症に大きく関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は、アレルギー性気管支喘息の発症に関与するセマフォリンを明らかとすることであった。セマフォリン7AがIgEによって引き起こされる炎症細胞浸潤、とくに好中球および好酸球の浸潤を抑制した。これまで、好中球の浸潤はアレルギー性気管支喘息における遅発性気道抵抗上昇および気道過敏性亢進に関与していることを報告しており、今回のセマフォリン7Aが好中球浸潤に関与している結果はとても価値のあるものと考える。その他、セマフォリン3Aに関しても、動物の例数追加などの検討が必要であるが好中球および好酸球浸潤に対して抑制傾向が認められた。一方、これまでにIL-33およびIL-17Aはアレルギー性気管支喘息(気道過敏性亢進)の増悪化を好中球浸潤を介して引き起こすことを明らかとしてきており、本モデルにおけるセマフォリン7Aの関与を検討した。その結果、セマフォリン7Aの中和抗体はIL-33およびIL-17Aによる好中球浸潤を抑制した。これらのことより、セマフォリン7Aのアレルギー性気管支喘息発症に果たす役割は大きい可能性がさらに明らかとされた。平成25年度は、セマフォリン7Aがアレルギー性気管支喘息発症に関与する好中球浸潤に関与していることを明らかとした。平成26年度は、セマフォリン7Aのアレルギー性気管支喘息発症における関与をさらに検討するとともに、セマフォリン4Aおよび4Dの関与についても検討する予定である。
平成25年度の実験結果より、セマフォリン7AはIgEによる気道過敏性発症に関与している好中球の浸潤に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。しかしながら、セマフォリン7Aが肺のどの部位に発現しているかなどについては不明である。そこで、平成26年度はIgEならびにIL-33およびIL-17Aによる気道炎症モデルを用いて、1)~5)を中心に検討する。1)セマフォリン7Aの産生増加が認められるか否かを、肺ホモジネート上清を用いてELISAにより測定する。2)セマフォリン7Aの発現部位の同定を病理組織切片による免疫染色ならびにフローサイトメトリーにより行う。3)セマフォリン7Aの受容体であるplexin-1に対する中和抗体を用いて両モデルに対する効果を検討する。4)セマフォリン7AのTh2やTh17サイトカインなどの産生における役割を検討する。5)セマフォリン7Aの気道リモデリングにおける役割についても検討する。以上の検討項目に加えて、セマフォリン4Aおよび4Dの喘息における役割についても検討する。平成26年度も平成25年度と同様に、マウスを用いたin vivo実験を中心とするため、それに必要な消耗品ならびに試薬を購入する。免疫染色ならびにフローサイトメトリーを行うため、セマフォリン7Aおよびplexin-1に対する様々な標識がされた抗体、ならびに種々細胞を同定するための抗体を購入する。病理標本を用いた染色などを行うため、病理標本作成に必要な消耗品や試薬などを購入する。Th2やTh17サイトカインなどを測定するためのELISAキットを購入する。抗原特異的IgE mAbを産生するハイブリドーマを培養するために必要な培養液や消耗品を購入する。その他、必要となる中和抗体、標識抗体、その他の試薬や消耗品などを得られた実験結果に対して柔軟に対応しながら購入試薬を検討していく予定である。
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