研究課題/領域番号 |
25460112
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
水谷 暢明 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (90340447)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | セマフォリン7A / アレルギー / 喘息 / 好中球 / サイトカイン / ケモカイン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アレルギー性気管支喘息発症におけるセマフォリンの役割について、マウス実験的アレルギー性気管支喘息モデルを用いたin vivo実験により明らかにすることである。平成25年度では、セマフォリン7AがIgEによって誘導される気道炎症(肺へのマクロファージ、リンパ球、好中球および好酸球浸潤)に大きく関与していることを明らかとした。そこで、平成26年度は炎症細胞浸潤に関与しているサイトカインおよびケモカインの産生増加におけるセマフォリン7Aの役割について検討した。 抗原特異的IgE mAbで感作したマウスに繰り返し肺へ抗原惹起を行うことで明らかな気道炎症が誘導され、Th2サイトカイン(IL-4, IL-5およびIL-13)、IL-17A、IL-33、IL-6およびCXCL1の産生増加が認められた。抗セマフォリン7A抗体は炎症細胞の浸潤を抑制するが、いずれのサイトカインならびにケモカインの産生増加に対しても明らかな影響を示さなかった。また免疫組織学的な検討により、セマフォリン7Aは肺の上皮、血管および炎症細胞に発現が認められ、その受容体であるplexin C1は炎症細胞に発現していることを明らかとした。 これらの結果より、セマフォリン7Aはサイトカインおよびケモカインの産生を介さず炎症細胞浸潤を引き起こしている可能性が示唆された。また、血管内皮細胞に発現しているセマフォリン7Aは、plexin C1を発現している炎症細胞の接着に関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の目的は、IgEにより誘導される気管支喘息モデル用いてセマフォリン7Aによる気道炎症のメカニズムを明らかにすることであった。これまでに、本モデルの炎症細胞の浸潤にはTh2サイトカイン(IL-4, IL-5およびIL-13)、IL-17A、IL-33、IL-6およびCXCL1が関与していることを明らかとしていることから、これらのサイトカイン産生に及ぼすセマフォリン7Aの役割を検討した。その結果、これらのサイトカイン産生にセマフォリン7Aは関与していなかった。一方、肺におけるセマフォリン7Aの発現は、上皮、血管および炎症細胞に認められ、さらにはその受容体であるplexin C1は炎症細胞に発現していることを免疫組織学的検討により明らかとした。他の論文で、内皮細胞に発現しているセマフォリン7Aは炎症細胞の接着に関与していることが報告されていることから、本モデルにおいても血管内皮細胞に発現しているセマフォリン7Aはplexin C1を発現している炎症細胞の接着に関与している可能性が示唆された。これらの結果から平成26年度の研究はおおむね順調に達成しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の結果より、セマフォリン7AはTh2サイトカイン(IL-4, IL-5およびIL-13)、IL-17A、IL-33、IL-6およびCXCL1の産生を介さずに炎症細胞の浸潤に関与していることを明らかとした。さらには、肺におけるセマフォリン7Aの発現は、上皮、血管および炎症細胞に認められ、さらにはその受容体であるplexin C1は炎症細胞に発現していた。これらのことから、本モデルにおいて、血管内皮細胞に発現しているセマフォリン7Aはplexin C1を発現している炎症細胞の接着に関与している可能性が示唆された。 平成27年度は、セマフォリン7AのIgEによる気道リモデリング(杯細胞の過形成および肺の線維化)および気道過敏性における関与について検討する予定である。一方、ダニはヒトにおけるアレルギーを引き起こす主要な抗原である。そこで、ダニで誘導されるアレルギー疾患モデルを用いたセマフォリン7Aおよびplexin C1の関与に関する検討を中心として、その他のセマフォリンについても検討する予定である。ダニによるアレルギー疾患モデルを用いた解析を行うことで、セマフォリン7Aおよびplexin C1のヒトにおけるアレルギー疾患での役割を考察したい。 平成27年度も平成26年度と同様に、マウスを用いたin vivo実験を中心とするため、それに必要な消耗品ならびに試薬を購入する。サイトカインおよびケモカインの測定キットならびに免疫染色やフローサイトメトリーなどに必要な抗体、さらには中和抗体を購入する。その他、必要となる試薬などは得られた実験結果に対して柔軟に対応しながら購入を検討していく予定である。
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