研究課題
昨年度までにトリプトファン誘導体トレーサー[11C]L-1-methyl-tryptophan(1-MT)の体内分布特性および取り込み機構の検証を行っている。今年度は躁うつ病モデルマウスであるα-カルモジュリン依存プロテインキナーゼIIヘテロ欠損マウス(CaMKII-hKO)における[11C] 1-MTの取り込み機序についてポジトロン断層撮像法(PET)により検討を行った。さらにCaMKII-hKOにおいて、[11C] 1-MT取り込みは野生型マウスに比べ30%低下していることが明らかとなった。CaMKII-hKOマウスではトリプトファン代謝酵素であるtryptophan 2,3-dioxygenase (TDO) が著名に低下しており、かつセロトニン神経伝達機能に低下が見られていた。このことが[11C] 1-MTの取り込み能の測定はうつ病の病態解明に有用なトレーサーであると推察された。さまた、キヌレニンの標的受容体であるアリル炭化水素受容体(AHR)作動薬ITE投与についても検討を行った。マウスにITEを投与し3時間後[11C] 1-MTのスキャンを行ったところ、脳および膵臓への[11C] 1-MT取り込みに増加がみられた。従ってトリプトファンの取り込みに調節に対しAHRの関与が示唆された。さらに遺伝性てんかん発症モデルであるELマウスを対象に[11C] 1-MT取り込み能測定を行った。この結果、ELマウスでは母系のddyマウスに比べ[11C] 1-MTが有意に高いことが明らかとなった。このことからトリプトファン代謝系はうつ病のみならず、てんかんなどの疾患にも関与していることが考えられ、複数の中枢神経疾患の診断マーカーとしての有用性が示唆された。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 備考 (1件)
Sci Rep
巻: 6 ページ: 11
10.1186/s13550-016-0170-2.
http://www.nirs.go.jp/seika/brain/