研究実績の概要 |
中南米およびアフリカを中心に大きな問題となっているトリパノソーマ症は、世界的な脅威になることが危惧されているが、安全で有効な治療薬が開発されていない。本研究ではトリパノソーマ症治療薬の素材としてあまり注目されていない海洋生物に焦点をあて、新たな治療薬の開発につながるシーズの発見を目的として研究を行った。 昨年度までに、Spongiidae科海綿よりメロテルペノイドのナキジキノンSとナキジキノールC、アセチレン脂肪酸誘導体のタウロスポンジンBおよびCを、Agelas属海綿よりブロモピロールアルカロイドのナゲラミドIおよび2,2'-デブロモナゲラミドBを、Amphidinium属渦鞭毛藻よりポリケチドのアンフィジニンC~Gを新規化合物として単離、構造決定した。これらの化合物の生物活性を評価した結果、ナキジキノンSは4種の細菌および3種の真菌に対して、ナキジキノールCは2種の細菌と4種の真菌に対して、タウロスポンジンCは1種の真菌に対して、アンフィジニンCとEは2種の細菌と2種の真菌に対して、アンフィジニンD, F, Gは1種の真菌に対して抗菌活性を示すことが明らかになった。 最終年度は、Verongida目海綿よりブロモチロシンアルカロイドのチロケラジンGおよびHを、Hyrtios属海綿より新規アゼピノインドールアルカロイドのヒルチナジンBおよびCを新規化合物として単離、構造決定した。チロケラジンGは2種の真菌に対して、チロケラジンHは1種の真菌に対して、ヒルチナジンBは1種の真菌に対して、ヒルチナジンCは2種の細菌に対して抗菌活性を示すことが明らかになった。現在、本研究により得られた新規化合物および同時に単離した既知化合物について、トリパノソーマ原虫に対する活性評価を進めている。
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