研究課題/領域番号 |
25460118
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
谷口 抄子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20243488)
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研究分担者 |
波多野 力 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50127578)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 漢方処方 / 成分分析 / 相互作用 |
研究概要 |
エキス剤の普及により需要の増加している漢方薬はこれらが天然物の混合物であり,種々の成分の総和として服用されていることはあまり意識されずに使用されている。これまでの生薬研究では個別の薬効成分を単離,探求する手法が一般的であったが,漢方薬の効果はむしろ複合,多成分系としての総合的な働きの結果であり,処方全体を評価する必要性がある。そこで使用される生薬の違いや煎じ方,メーカ毎のエキス剤の違いによって同一処方で,どの程度の差異があるのかを明らかにすることを目的に研究を行った。 今回,代表的な基本処方および関連処方について検討した。標準プロファイルの作成ではグラジエント系でのHPLC分析を行うことにより,幅広い極性の芳香族化合物の一斉分析が可能であり,その分析条件を確立した。また,刻み生薬によるバラツキの少ない標準的な煎じ方について検討し,基本となる標準的な煎じ方を確立した。 一方,沈殿物はエキス剤調製時に取り除かれることからエキス剤と煎じた場合の大きな差異として挙げられる。そこで代表的な成分による沈殿形成の挙動について,紫外可視スペクトル分析による比較を行い,沈殿形成の要因として成分間のカウンターイオンの影響や疎水性相互作用を示唆する基礎的データを得た。また明瞭な沈殿形成を示す生薬成分の一つとして大黄に含まれる高分子成分が関与していると考えられたことから,入手可能であった基原の異なる大黄や修治された大黄についてGPCによる高分子成分の成分分析を行ったところ,それぞれ異なる分子量分布を示した。これら成分の組成の違いが沈殿形成に与える影響についても今後検討する必要がある。 また別途,疎水性成分の沈殿形成への寄与を検討するため,補骨脂の疎水性成分について精査を行い,その過程において新規化合物の構造を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.刻み生薬を利用して標準的な煎じ方の検討を進めた。用いる生薬量と煎じ方などを変更して,バラツキを確認した。今回作成した標準的な煎じ方および分析条件により,基本処方の解析を行ったところ,それぞれの処方ごとに特有のパターンが確認できた。また,いくつかの処方については加減法での検討を行ったところ,加えた生薬によっては基本処方に含有されている成分の含有量に差が見られたことから,生薬成分の相互作用が起こる可能性が示唆された。これまでに,標準処方の分析条件についてはほぼ確立できたが,定量的評価については今後進めるべき課題である。またサポニン含有生薬については個別の成分の評価は困難であることから別途評価系を確立する必要があり,この点も今後の課題となる。 2.沈殿形成について,いくつかの刻み生薬の組み合わせ,および代表的な成分間での検討を進めた。また大黄の高分子成分のGPC分析の結果から基原や修治により組成が異なることが示された。これら高分子成分の沈殿形成への影響や,他の生薬での検討を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1.生薬の加熱処理や基原植物の違いにより高分子成分に差異を認めたことから,他の生薬についても通常のHPLC分析では解析できない高分子成分についてGPCによる解析を進める。これら高分子成分が他の生薬と同時に煎じた時に変化するのかについても検討を進める。 2.標準的な条件だけでなく,煎じ方を変更することにより同一処方でどの程度の差異があるのかについて,指標となる成分については,標品による定量などを行いさらに検討を進める。これらのデータをもとにエキス剤での評価を進め,同一処方での製品間での差を明らかにする。 3.沈殿物について紫外可視スペクトル分析やNMR,GPC分析などにより解析する。
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